ネット症候群(編プロ編)

小説家の盛田隆二さんは、ボクが勤めていた情報誌出版社、ぴあで一緒に仕事をした先輩である。先日彼とお話をする機会があって昔話がたくさん飛び出して楽しかったのだが、お互いなんでぴあを辞めようと思ったのか……という話になって「阪神大震災でインターネットへのシフトが確実になったのが大きかったよね」と何となく話がまとまった。

それまでニフティだとかあったけれど、どうも一般的ではなかったのだが、あの阪神大震災での情報共有やデマや誹謗中傷を含めて、日本のネット社会へのスピードを加速させたのは確実だったと思う。あれから17年経って我々編集現場も随分と変わったと思う。弊社のスタッフでも版元の現場でも、ネットでの事前リサーチは当たり前の事となって久しい。

先日こんなビックリする事があった。とある取材記事の情報について疑問の生じた弊社スタッフが、若手フリーライターに情報の真偽の出典を電話で問い合わせた。若きライターくんはこう言ったそうだ。

「ウィキにそう出てたので間違いありません」

ご存知Wikipediaという投稿型のフリー百科事典サイトだ。確かにどんな語句や人名を検索してもたいていの場合は何らかの情報を得られる便利なサービスになっていて、僕も一日のうちで何度もお世話になる優良コンテンツだとは思う。……が、やはり投稿型であって間違った情報も時々は見受けられる。それを承知で使っているのであれば便利この上ないサービスが、この若いライターくんにとっては確実な情報ソースとして認知されてしまっていたのだと思うと、ちょっと空恐ろしいような気がするのである。 

この20年でインターネットが編集界に与えた功績は大きなものがある代わりに何か大切な事を編集者や取材者から奪った事も確かだ。

今からこの業界で行きて行く人にとってネットという魔物とどうつき合っていくのかが問われる時代になって来た。ただただ便利なだけでは読ませるコンテンツの役には立たないのである。

石原卓「東奔西走 関西の編プロ社長奮闘記」バックナンバー

『編集・ライター養成講座 総合コース』
※本コラムの執筆者 石原卓氏は大阪教室にて登壇します。

雑誌、書籍、フリーペーパー、PR誌、Webサイトなど幅広いメディアに対応できる編集・ライティングスキルを基礎から体系的に学べます。講師陣は、情報誌、ビジネス誌、Webメディアなどさまざまな分野の現役編集長や、第一線で活躍中のライター・作家など。多くの課題添削、実践トレーニングを通じて全国で活躍できる編集者、ライターを養成します。

詳細はこちら

石原 卓(クエストルーム代表取締役/140B取締役)
石原 卓(クエストルーム代表取締役/140B取締役)

1963年神戸市生まれ。ミュージシャンを目指すが大学卒業と共にぴあ入社。広告部、編集部を経て同社各誌編集長を歴任後、1996年同社退社と共にクエストルームを創業。大阪を中心に東京、名古屋などに拠点を置く。現在は江弘毅らと編集集団140Bの経営にも携わり、関西大学社会学部で教鞭(講師)など、編集エリアを越えて様々に活躍中。2001年から宣伝会議編集・ライター養成講座大阪教室の講師を務める。

twitter → http://www.twitter.com/makoto_ishr
Facebook → http://www.facebook.com/makoto.ishr
クエストルームのFacebook→ http://www.facebook.com/questroom

石原 卓(クエストルーム代表取締役/140B取締役)

1963年神戸市生まれ。ミュージシャンを目指すが大学卒業と共にぴあ入社。広告部、編集部を経て同社各誌編集長を歴任後、1996年同社退社と共にクエストルームを創業。大阪を中心に東京、名古屋などに拠点を置く。現在は江弘毅らと編集集団140Bの経営にも携わり、関西大学社会学部で教鞭(講師)など、編集エリアを越えて様々に活躍中。2001年から宣伝会議編集・ライター養成講座大阪教室の講師を務める。

twitter → http://www.twitter.com/makoto_ishr
Facebook → http://www.facebook.com/makoto.ishr
クエストルームのFacebook→ http://www.facebook.com/questroom

この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

このコラムを読んだ方におススメのコラム

    タイアップ