CM「負けるもんか」はYouTubeで100万回以上再生
――ソーシャルメディアによってユーザーに違いは感じられますか。
石井 1つ1つのツールに関してはまだセオリーのようなものが決まっておらず、どう使い分けていくのかを試行錯誤していますが、フェイスブックとツイッターでは情報の広がり方に差があると感じています。ツイッターはホンダに興味が無い人にも拡散されていきますが、フェイスブックの場合は「いいね!」をつけてくれたファンの間で情報が広がる、というイメージですね。このあたりはツールごとの特性を見極めながら運用していきたいと思います。
YouTubeも興味深いツールですね。テレビCMの「負けるもんか」は地上波で10回も放送していないのですが、YouTubeにアップロードしたところこれまでに100万回以上も再生されました。その再生回数のうち60%近くがYouTubeのサイト上でなく、他のサイトに埋め込まれた動画が再生されています。
Honda CM「負けるもんか(プロダクト)編」
今までも自社サイトで動画やCM映像などは掲載していたのですが、そうした映像はサイトに来てもらえないと見てもらうことができません。YouTubeは他のサイトにも埋め込めることで広がっていくところに強みを感じます。動画は海外にも広がっていて、NSXのイメージ映像はロシアの車情報サイトに掲載されて多く再生されました。動画は国境を越えてボーダーレスに広がっていくポテンシャルを持っていますね。
――mixiページも運用されていますが反応はいかがですか。
染谷 mixiページは若い女性が多いので、絵文字を使ったり、女性を意識した投稿にしてみたりと工夫してみたのですが、今のところフェイスブックのファンとあまり層が変わらない印象です。本来であればmixiの属性に合ったテーマで投稿をしたほうがいいのかな、と思いつつ、お客さまからの反応を見るとそういうことが求められていないようで、この点は課題ですね。
――Ustreamも運用されていますね。
石井 広報はメディア向けの発表会も開催していますが、メディアの露出を待っているだけでなく、自らもダイレクトにお客さまに発信していったほうが良いのではないかと感じていました。それまで新車の発表会などは報道関係者のみしか参加できない聖域だったのですが、それももうオープンにしていったほうがいい、というのがきっかけです。
視聴数は多いときで2500くらいありますが、通常は300~400程度ですね。人気があるのはモータースポーツの会見で、国内外のライダーやドライバーも来るため、ファンの方々も含めて視聴者数が増えます。また、東京のショールーム、ウエルカムプラザ青山では毎週のようにイベントを開催していますが、地方の方は参加するのも難しいので、そうしたイベントのライブ配信も行っています。
ユーザーの書き込みに一喜一憂しない
――運用面で苦労されたことはありますか。
染谷 アカウントは、私を含めて3人で運用していますが、これまで大変な事態になったということはあまりありません。クレームやご批判をいただくこともありますが、都度担当者同士で相談して対応していますし、1つ1つのコメントで一喜一憂することはしないようにしています。
石井 お客さまは勢いで「いいね!」をつけていたり、直感的にコメントされている場合もあるので、一憂はもちろんのこと一喜もしないように、冷静に判断することを心がけています。「いいね!」の数はもちろん重要ですが、「いいね!」が多ければいいというような単純な測定は行わず、他の投稿との数値比較などを踏まえて分析するようにしています。
――今後利用してみたいソーシャルメディアはありますか。
石井 運用は2人で兼任していることもあって、ツールはこれ以上増やせない、というのが正直なところですね。写真系サービスなども気にはなりますが、これ以上やっても手に余る、というのが本音です。むしろお店を広げるよりもより密度を高め、クオリティを上げていく方向で考えています。広告でファンを獲得するという方法もありますが、予算も限られているので、今はクチコミでじわじわとファンを獲得していきたいと考えています。
――ソーシャルメディアでの効果測定はどのように行われているのでしょうか。
石井 今のところ正解はないですね。まずは同業他社とのベンチマークで測定していこうと考えていましたが、他社さんは広告を使って積極的にファンを獲得されているので、ファン数だけで見ると大きな差が開いています。我々はファン数だけでなく、実際に「いいね!」したりコメントを投稿したりしていくれている反応数も指標にしています。広報としてニュートラルに情報を発信しつつ、社内にもソーシャルの価値を理解してもらえるような啓蒙活動を行っていきたいと思います。
――インタビュー雑感
限られた予算の中でも、じわじわと口コミでファンを広げて、目に見える成果を上げているホンダさんはとてもすごいと思います。少人数のチームながら、しっかりとユーザーと向き合い、それでいて複雑な目標設定をしたりユーザーの反応に一喜一憂したりしない、という非常にバランスの良い姿勢が、成功のカギとなっているのかもしれません。(アジャイルメディア・ネットワーク)
インタビュー担当 AMN 甲斐祐樹
次回(2013年1月15日)は東急ハンズです。
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