宣伝会議の人気講座「編集・ライター養成講座」で講師をするようになって随分時間が経った。そもそもこの講座タイトルには「編集」と「ライター」は何が違うのかという、たいへん曖昧なテーマが潜んでいる。このふたつの職種には渾然一体寸前の同じ色と、対立した全く別の色があると思うのだ。
ネット全盛となった現代でも編集者とライターはそのフィールドが誌面からネットメディアへと、どんどん拡大し続けているように思う。ライターは文章を書いて納品するだけと、多くの人が思い違いをしているが、そうではない。ライターというのは専門的なコミュニケーターであるというのがボクの持論だ。音楽ライターならミュージシャンや業界関係者に対してコミュニケーションを媒介にして情報を得ていく。媒体に合わせて文章というツールで伝えるものの、実はそのコミュニケーションの結果を提示しているというワケだ。
では編集者とは何か? これも同じくコミュニケーターだ。ライターが主に人的な想いと媒体をつなぐ架け橋だとしたら、編集者はそれらに加えて視覚的なコミュニケーションをも考える。端的にいえばデザイナーだとかカメラマンだとか、そういうスタッフ間のコミュニケーションをうまくとれる編集者が敏腕編集者と言われる人々なのだ。
そう考えると、どちらも専門職のような捉えられ方をするのだけれど、その実はいかに人とコミュニケーションが構築できるか? にかかっている。人嫌いで職人気質では勤まらない仕事なのだと思う。
取材で知り合った店主だったり、デビュー間もない時にたまたまインタビューしたアーティストと今も懇意にしていたりする。こういうのってライターにとっても編集者にとってもイチバン重要な事なのかもしれない。
人に好かれてなんぼ! な仕事が編集者であり、ライターなんだと最近は強く思っているのである。
石原卓「東奔西走 関西の編プロ社長奮闘記」バックナンバー
- 第7回 ネット症候群(編プロ編)(12/14)
- 第6回 級数表とトリミングスケール(12/7)
- 第5回 関西の味についての一考察(11/30)
- 第4回 編集とは行儀ではないかという仮説(11/16)
- 第3回 江戸好みの京都特集ってどうよ!(11/9)
- 第2回 版下の時代にあったモノ(11/2)
- 第1回 企画書の開き方、東西東西。(10/26)
『編集・ライター養成講座 総合コース』
※本コラムの執筆者 石原卓氏は大阪教室にて登壇します。
雑誌、書籍、フリーペーパー、PR誌、Webサイトなど幅広いメディアに対応できる編集・ライティングスキルを基礎から体系的に学べます。講師陣は、情報誌、ビジネス誌、Webメディアなどさまざまな分野の現役編集長や、第一線で活躍中のライター・作家など。多くの課題添削、実践トレーニングを通じて全国で活躍できる編集者、ライターを養成します。