私たちの共通言語、リボン思考とは?

「企画を考える際に、一番大切なものは何ですか?」

学生からよくこんな質問をもらいます。
皆さんならなんと答えますか?
情熱、天性、意思、根性、情報力、ひらめき、…。色々な答えがあると思います。

でも私は、いつもこう答えています。
「リボンですね」

私の仕事は、ブランディングのよろずや

はじめまして、博報堂ブランドデザインの宮澤正憲です。
その名の通りブランディングを専門に仕事をしています。

ここ数年でブランディング業務の内容は急激に拡大しました。それにともなって私の仕事も広告やCI・VIといったイメージ形成から、さまざまな商品やサービス開発、空間建築といった実体をつくる仕事、あるいは組織づくりや人材研修、経営ビジョン作成などの形のないものまで含めて、従来の広告会社では扱わなかった業務を行うようになっています。

そのため私がリーダーを務めている「博報堂ブランドデザイン」には、マーケッターやリサーチャー、デザイナー、コピーライターに加えて、コンサルタント、一級建築士、法務家、人材開発の専門家など、さまざまな専門性を備えた者が集まっており、広告会社においてもかなり風変りなチーム構成になっています。言うならば「ブランディングのよろずや」といった感じでしょうか。

私たちの共通言語、それがリボン思考

そんな多彩な職種のメンバーと同席しながら仕事をしていると色々な発見があります。デザイナーの思考方法と、建築士の考え方、リサーチャーの発想、同じ“考える”という行為でも随分と頭の働きが違うことを実感します。たまに会話がかみ合ってないときなどは、違う国籍の人々の会話のように感じることすらあります。当たり前ですが使っている脳の部分が異なるわけで、だからこそ多彩なアウトプットが生み出されるわけです。ものを生み出したり、企画を考えたりする上で多様性は必須条件ですので、バラバラな思考方法であることは歓迎すべきことなのですが、一方でバラバラが行き過ぎると相乗効果が生まれず、一つのチームとしては成立しません。

このようなバラバラなバックグラウンドや異なった発想パターンを持つ私たちのメンバーですが、全員が数少ない共通点として大切にしていることが一つあります。

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私たちがもっとも大切にしているもの。

それが「リボン思考」です。

これこそが私たちがもっとも大切にしているものであり、発想の原点でもあります。言わば、異なる領域のビジネス企画を行う上での共通言語になっているのです。

リボン思考は、拡散と収束のくりかえし

リボン思考とは、図のような基本的な思考や発想作業の流れを示したものです。左から「インプット」「コンセプト」「アウトプット」の3つのステップからなるシンプルな構造で成り立っています。インプットではできるだけ多くの情報を収集し(拡散)、コンセプトを絞り込み(収束)、そこからアウトプットを多彩に拡げていく(拡散)。そうした意味を込めています。

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「リボン思考」の基本構造。拡散、収束、拡散というシンプルな構造です。

これは、広告制作はもちろんのこと、商品開発、空間建築、組織作り、ビジョン作成など、作業の中身の違いはあっても基本的にこの流れにそって考えることができるフレームです。図の形状がリボンや蝶ネクタイのような形をしているので、私たちはボウタイフレームとかリボンフレーム、または「リボン思考」などと呼んでいます。

正直、この中身自体は新しいものではありません。しかしこの古典的ともいえる「リボンフレーム」が今一度、重要になってきていると私は考えています。なぜなら年々複雑になってきたマーケティングの企画立案作業をシンプルにまとめ直す方法論であり、また、狭義の広告・マーケティング作業などにとどまらない多様な領域に応用のきく極めて汎用性の高い思考・発想方法であるからです。極端にいえば、どんなタイプの仕事であっても、およそ企画と名のつくものに関しては、このフレームは有効だと考えています。

しかし一方で、シンプルな構造なだけに、理解の容易さにくらべて使いこなすのはかなり難しいものです。また、ブランディングやマーケティングの企画にあてはめると、リボン思考の枠組みそのものは昔も今もあまり変わりませんが、中身が従来とは大きく変わってきています。こうした昨今の変化にも対応しないとこのフレームを今の時代において使いこなすことはできないのです。

大学生にもリボン思考の実践を!ブランドデザインコンテスト「BranCo!」

このように「リボン思考」は、ごく基本的な思考方法であり、かつ汎用性が極めて高い方法であるのにもかかわらず、学校などではほとんど教えることはありません。このフレームを習得することで企画力や発想力を高めることができるのに、これは惜しいな、と常々思っていました。これからの企画業務に携わるであろう若者の多くがこの思考を理解し体得することは、大げさにいえば日本全体の発想力の底上げになるのではないかと思っていたからです。

そんな問題意識もあったため、2011年度から東京大学教養学部で「東京大学×博報堂 ブランドデザインスタジオ」という新しいタイプの授業を開講しました。この授業は単位の取得できる正規の授業で、この「リボン思考」をワークショップなどの共創のスタイルの中で東大生に学んでもらおうという趣旨で行っています。実際、授業を受けた東大生からは、このフレームや方法論を習得することで、ビジネス発想への理解が深まっただけでなく、それ以外のこと、たとえば就職活動や論文、さらにはサークル活動の企画などにも役立てることができたという声をもらっています。

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東京大学×博報堂ブランドデザインスタジオ リボン思考をベースにワークショップ形式の授業を実施中

そして、今年度からは有志の大学生たちとともにブランドデザインコンテスト「BranCo!(ブランコ)」を新たに開始しました。

「BranCo!」は、大学生によるチーム対抗のブランディングコンテストです。「リボン思考」の実践を目的に、35チーム、約200人の学生が参加しています。1月下旬に最終プレゼンテーション大会を行う予定で進行中のため、このコラム一回目の段階では今まさに果敢に挑戦してもらっているところです。「BranCo!」の活動の詳細は次回以降のコラムで順次記載していきますが、最終的にどんな内容になるか楽しみです。

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ブランドデザインコンテスト「BranCo!」 今まさに約200人の大学生が真剣に取り組んでいます!
ウェブサイト

というわけで、このコラムではブランドデザインコンテスト「BranCo!」に焦点をあてて、その活動内容や参加者の声などを紹介しながら、リボン思考の中身、さらには企画における基本的な発想方法について考えていきたいと思います。お楽しみに!

宮澤 正憲(博報堂ブランドデザイン リーダー)
宮澤 正憲(博報堂ブランドデザイン リーダー)

1966年生まれ。東京大学文学部心理学科卒。博報堂に入社後、マーケティング局にて食品、自動車、トイレタリー、流通など多様な業種の企画立案業務に従事。2001年に米国ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院(MBA)卒業後、次世代型ブランドコンサルティングの専門組織である「博報堂ブランドデザイン」を立上げ、 ビジョン策定、企業戦略、新事業開発、CI、VI、商品開発、空間開発、組織開発、人事研修など多彩なブランドビジネス領域において実務コンサルテーションを行っている。

現在、東京大学教養学部にて、共創型教育プログラム「ブランドデザインスタジオ」を運営中。成蹊大学非常勤講師として「商品・企業ブランド戦略論」を開講。主な著書に、「『応援したくなる企業』の時代」(アスキー・メディアワークス)、「ブランドらしさのつくり方-五感ブランディングの実践」(共著、ダイヤモンド社)、「だから最強チームは『キャンプ』を使う」(共著、インプレスジャパン)、「ドンシュルツの統合マーケティング」(共訳、ダイヤモンド社)、「MBAは本当に役に立つのか」(共著、東洋経済新報社)など多数。

BranCo!公式HP http://www.h-branddesign.com/BranCo/

博報堂ブランドデザイン
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宮澤 正憲(博報堂ブランドデザイン リーダー)

1966年生まれ。東京大学文学部心理学科卒。博報堂に入社後、マーケティング局にて食品、自動車、トイレタリー、流通など多様な業種の企画立案業務に従事。2001年に米国ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院(MBA)卒業後、次世代型ブランドコンサルティングの専門組織である「博報堂ブランドデザイン」を立上げ、 ビジョン策定、企業戦略、新事業開発、CI、VI、商品開発、空間開発、組織開発、人事研修など多彩なブランドビジネス領域において実務コンサルテーションを行っている。

現在、東京大学教養学部にて、共創型教育プログラム「ブランドデザインスタジオ」を運営中。成蹊大学非常勤講師として「商品・企業ブランド戦略論」を開講。主な著書に、「『応援したくなる企業』の時代」(アスキー・メディアワークス)、「ブランドらしさのつくり方-五感ブランディングの実践」(共著、ダイヤモンド社)、「だから最強チームは『キャンプ』を使う」(共著、インプレスジャパン)、「ドンシュルツの統合マーケティング」(共訳、ダイヤモンド社)、「MBAは本当に役に立つのか」(共著、東洋経済新報社)など多数。

BranCo!公式HP http://www.h-branddesign.com/BranCo/

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