石川淳哉さんに聞く(後編)「ラブとパワー。」

前編からの続きです。

ishikawa
石川淳哉 プロフィール
1962年大分県生まれ。株式会社ドリームデザインCEO、株式会社イナズマCEO、公益社団法人助けあいジャパン創始者副会長。プロデューサー。主な仕事に、書籍「世界がもし100人の村だったら」、イベント「FIFA WORLDCUP PUBLICVIEWING IN TOKYO」、ピースアートプロジェクト「retired weapons」、311復興情報配信プロジェクト「助けあいジャパン」など。「大学コンソーシアム京都(京都50 大学が参加)」や宣伝会議での講師もつとめる。

NPOは、もっとパワーを。企業には、もっとラブを

並河:復興支援の活動と、企業のCEOとしての活動と、その両方を続けていて感じることはありますか?

石川:被災地で続けられなくなって解散しているNPOも多いんですよね。NPOは、もっとパワーを持ち続けないといけない。

逆に、企業は、企業経営自体が共感するものになっていかないと続かない。企業にはもっとラブが必要なんだよね。

その両方が進まないと、日本はこれ以上進化しないと感じていて、おおげさかもしれないけれど、そのために僕ががんばらないと、と思ってるんです。

グラミン銀行をつくって、ノーベル平和賞に輝いたモハメド・ユヌスの言葉に、こんな言葉があるんです。

「すべての人間には、利己的な面と無私献身的な部分がある。私たちは、利己的な面だけで資本主義をつくってしまった。そこに無私の部分を持ち込むことで、資本主義ははじめて完成するんだ」といった内容で、僕は、はっとさせられた。

僕は、ずっと、資本主義を変えなくちゃいけないと思い込んでいた。
でも、そうじゃなくて、資本主義を、完成させればいいんだって。
自分はそれを完成させるためのパーツをつくればいい。
そう考えたら、ちょっと勇気がわいたわけ。

並河:体制をくつがえして、また新たな体制ができて、それをくつがえして、という繰り返しよりも、もともとあるものに足りないものがあって、みんなで完成させよう、っていうほうがいいのかもしれない。

石川:結局ラブとパワーなんだよね。その両方を本気でやることを人類はまだやれていない気がする。人類の話になっちゃったけど、大丈夫?

並河:大丈夫です。最終回の一つ前ですから。(笑)

「やるべきだけど、誰もやっていないこと」を、
みんなで何かを出しあって、実現するということを僕はやりたい

並河:石川さんは、いつも、「これをやるべきだ」というところからはじまるじゃないですか。

石川:通常の広告づくりって、企業が予算を用意して、この日までにこれをやってほしいというプロジェクト。

そうじゃなくて、「これがあったほうがいいよね」っていうところに、お金、ボランティア、人手、時間……いろんなものが集まれば、カタチになるんだっていうことを、僕は実現しようとしてきたし、かなり実現できてきているかな、と感じています。

並河:僕もすこしずつ見えてきています。

石川:まだふわふわしてるけどね。おぼろ月夜ぐらい?
でも、ここ悩んでいますという部分もシェアしながら進んでいける世の中だからね。

「やるべきだけど、誰もやっていないこと」を、国、県、市町村、NPO、プロボノ、広告屋さん、メーカー、企業、メディア、生活者、そういったマルチステークホルダーがいっしょになって実現するということを僕はやりたいんです。

広告すべてがそうならなくてもいいけれど、そういうことがあってもいいんじゃないかな、と。

並河:僕も、「資本主義」という言葉にずっと違和感を覚えていたんです。でも、そうか、資本主義の「資本」に、お金だけじゃなくて、人手とか、時間とか、愛とか、勇気とか、そういうものも入れればいいのか。

石川:実際、社長がその業界への愛を語ったら、株価があがるときだってあるよね。だけど、実際のビジネスになると、愛と勇気を取り込む計画がないんですよ。お金がお金を生むほうが簡単だから。

でも、まずは、僕らが、プロジェクトを進めるときに、お金だけじゃない、いろんなものを集めて進めることはできると思う。

並河:この人からは「アイデア」があるかもしれない、この人からは「時間」があるかもしれない、と。

石川:お金だけ出したい人。時間だけ出したい人。スキルだけ出したい人。

いろんな人がいる。その人たちを、ミッションに向かって、説明責任を果たすのが、プロデューサーの役目だから。

並河:石川さんは、僕に対しても、学生に対しても、漁師のおじちゃんに対しても、県知事に対して、「これはやるべきだ」って、同じ熱量で話しますよね。その理由は、学生にも、県知事にも、漁師のおじちゃんにも、僕にも、なにか、そのプロジェクトに出せるものがある、と思っているからなんですね。

石川:そのときに大事なのは、みんながゴールイメージを共有できるかってこと。

並河くんといっしょにやった情報レンジャーだと、最初に、あの情報レンジャーのスケッチがあった。

みんながテーブルに着いて、自分にできることを考えるために、そのテーブルの真ん中においてある「絵」をつくる。

その「絵」こそがクリエイティブだと僕は思うんです。

ranger

助けあい情報レンジャー最初のスケッチ

「広く告げる」から、「告げて、広げる」

並河:広告の未来についてどう思いますか。

石川:漢文で、「レ点」というのがあるんだけど、僕は「広告」にレ点を打ちたい。
「広く告げる」から、「告げて、広げる」。

伝える価値あるものが広がる、ということになっていかないといけない。それを仕組み的にもつくるべきだと考えている。

広告屋が、ふるまいを変えることで、広告を価値のあるもの、続くものにできるし、夢のあるものにできると僕は思っている。

大事なのは、「やる」っていうこと。俺たち変わろうぜ、って言ったって信じられない。アクションからしか何も生まれない。

俺も「やる」。

口で言ってるだけじゃなくて、事業になって、はじめて、変わっていくんです。
で、後から「ああ、こういうことか」と分かってくる。
そういうもんなんだよね。


次回は、なんと最終回!

2月4日にB&Bで開催される
最終回スペシャルイベント「広告の未来の話をしよう@B&B」
電通コミュニケーション・
デザイン・センター 東畑幸多×
博報堂ケトル 嶋浩一郎×
電通ソーシャル・
デザイン・エンジン 並河進の様子をお伝えします!
(満員御礼!ありがとうございます!)

並河 進「広告の未来の話をしよう。COMMUNICATION SHIFT」バックナンバー

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並河 進(電通ソーシャル・デザイン・エンジン コピーライター)
並河 進(電通ソーシャル・デザイン・エンジン コピーライター)

1973年生まれ。電通ソーシャル・デザイン・エンジン所属コピーライター。ユニセフ「世界手洗いの日」プロジェクト、祈りのツリープロジェクトなど、ソーシャル・プロジェクトを数多く手掛ける。DENTSU GAL LABO代表。ワールドシフト・ネットワーク・ジャパン・クリエーティブディレクター。宮城大学、上智大大学院、東京工芸大学非常勤講師。受賞歴に、ACCシルバー、TCC新人賞、読売広告大賞など。著書に『下駄箱のラブレター』(ポプラ社)、『しろくまくん どうして?』(朝日新聞出版社)、『ハッピーバースデイ 3.11』(飛鳥新社)他。

並河 進(電通ソーシャル・デザイン・エンジン コピーライター)

1973年生まれ。電通ソーシャル・デザイン・エンジン所属コピーライター。ユニセフ「世界手洗いの日」プロジェクト、祈りのツリープロジェクトなど、ソーシャル・プロジェクトを数多く手掛ける。DENTSU GAL LABO代表。ワールドシフト・ネットワーク・ジャパン・クリエーティブディレクター。宮城大学、上智大大学院、東京工芸大学非常勤講師。受賞歴に、ACCシルバー、TCC新人賞、読売広告大賞など。著書に『下駄箱のラブレター』(ポプラ社)、『しろくまくん どうして?』(朝日新聞出版社)、『ハッピーバースデイ 3.11』(飛鳥新社)他。

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