優れたアウトプットは、優れたインプットから
こんにちは、宮澤です。この連載コラムでは、学生向けブランドデザインコンテスト「BranCo!」の活動を通じて、私たちが普段のブランディング業務で重視している「リボン思考」について紹介しています。「リボン思考」は、「インプット」「コンセプト」「アウトプット」の3フェーズからなる企画の基本思想です。「BranCo!」にもそれぞれのセミナーを組み込み、この流れにそって企画を考えられるようにしました。
さて、3回目となる今回は、「インプット」について紹介したいと思います。多様な要素や情報を収集し分析する、企画の入り口にあたるフェーズです。言い換えればリサーチですね。リサーチというと、アイデアを発想したりする作業とは別だと思われがちですが、ジェームス・W・ヤングの「広告マンは牛と同じである。食べなければミルクは出ない」という名言のとおり、私たちもまた優れたアイデアは良質なインプットから生まれると考えています。
「インプット」と一口に言っても、文献検索からデータ解析、アンケート調査までたくさんの手法がありますし、商品についてだけでなく市場動向や顧客意識の分析などさまざまな視点が必要です。独自の視点で他にはない有益な情報を集められれば、それだけ発想の幅が広がります。その意味でも「マーケティングリサーチ」と呼ばれる生活者に対する調査は特に重要になります。
「インプット」はリボン思考の最初の大事なステップです
仮説検証をするだけがリサーチではない
マーケティングリサーチについて、もう少し見ていきます。定点観測調査のような実体把握型の調査を除くと、マーケティング調査は検証型調査と探索型調査の大きく2つに分類できます。
検証型調査とは、まず仮説を立てて、それが正しいかどうかを検証するタイプの調査です。一般的には大サンプルの定量調査でモデルをつくって解析したり、商品サンプルなどを提示してその評価を行うグループインタビューなどがこれに当てはまります。一方、探索型調査は、新たに仮説を開発したり、新しいものを生み出すときに使用される調査です。どちらかといえば、デプスインタビューやエスノグラフィーといった質的な調査が中心です。
この2タイプの調査は、仮説の捉え方が異なります。何らかの調査を行うとき、通常は「知りたいこと」を明確にして設計することが多いと思います。私も仕事をし始めた頃、調査に一番大切なことは仮説の明確化だと叩き込まれました。ただその場合、調査結果は仮説を支持または却下するための材料として役立ちますが、それ以上の発見はあまりありません。もちろん仮説検証が必要な場合もありますが、最初から明確な仮説があるのならわざわざ調査するほどでもないとも言えます。
一方、行動観察やインタビューを通して人の心理を探る定性調査は、こちらがまっさらな視点で臨むことで、思いもよらないヒントを得ることがあります。もちろん、調査を設計する上で初期仮説は必要ですが、それに縛られず、最初は気付かなかった思わぬ発見を探し求める姿勢がとても大切です。インプットでの発見に「おっ!」という驚きがあればあるほど、次のステップであるコンセプトへの収束も容易になるからです。
(次ページヘ続く)
探索型調査(デプスインタビュー)を実際に行っている学生スタッフ
宮澤 正憲(博報堂ブランドデザイン リーダー)
1966年生まれ。東京大学文学部心理学科卒。博報堂に入社後、マーケティング局にて食品、自動車、トイレタリー、流通など多様な業種の企画立案業務に従事。2001年に米国ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院(MBA)卒業後、次世代型ブランドコンサルティングの専門組織である「博報堂ブランドデザイン」を立上げ、 ビジョン策定、企業戦略、新事業開発、CI、VI、商品開発、空間開発、組織開発、人事研修など多彩なブランドビジネス領域において実務コンサルテーションを行っている。
現在、東京大学教養学部にて、共創型教育プログラム「ブランドデザインスタジオ」を運営中。成蹊大学非常勤講師として「商品・企業ブランド戦略論」を開講。主な著書に、「『応援したくなる企業』の時代」(アスキー・メディアワークス)、「ブランドらしさのつくり方-五感ブランディングの実践」(共著、ダイヤモンド社)、「だから最強チームは『キャンプ』を使う」(共著、インプレスジャパン)、「ドンシュルツの統合マーケティング」(共訳、ダイヤモンド社)、「MBAは本当に役に立つのか」(共著、東洋経済新報社)など多数。
BranCo!公式HP http://www.h-branddesign.com/BranCo/
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1966年生まれ。東京大学文学部心理学科卒。博報堂に入社後、マーケティング局にて食品、自動車、トイレタリー、流通など多様な業種の企画立案業務に従事。2001年に米国ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院(MBA)卒業後、次世代型ブランドコンサルティングの専門組織である「博報堂ブランドデザイン」を立上げ、 ビジョン策定、企業戦略、新事業開発、CI、VI、商品開発、空間開発、組織開発、人事研修など多彩なブランドビジネス領域において実務コンサルテーションを行っている。
現在、東京大学教養学部にて、共創型教育プログラム「ブランドデザインスタジオ」を運営中。成蹊大学非常勤講師として「商品・企業ブランド戦略論」を開講。主な著書に、「『応援したくなる企業』の時代」(アスキー・メディアワークス)、「ブランドらしさのつくり方-五感ブランディングの実践」(共著、ダイヤモンド社)、「だから最強チームは『キャンプ』を使う」(共著、インプレスジャパン)、「ドンシュルツの統合マーケティング」(共訳、ダイヤモンド社)、「MBAは本当に役に立つのか」(共著、東洋経済新報社)など多数。
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