パッケージデザイン賞の価値「ペントアワード2012」——「販促会議3月号」より

パッケージのメディア特徴は購買に近いことだ。パッケージを見る人は、商品の購入をその場で検討している人である。それだけ、販売促進におけるパッケージデザインの役割は大きい。パッケージデザインを手掛けるアイ・コーポレーションの小川亮氏に、優れたパッケージを紹介してもらう。

ここでは、『販促会議』2013年3月号に掲載中の連載「販促NOW-パッケージ」の全文を転載します。


(文:アイ・コーポレーション 代表取締役 小川 亮)

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賞の公平性は、オランダ、フランス、アメリカ、日本、スウェーデンと、毎年ダイヤモンド賞の受賞国がばらばらであることからもうかがえる。

「Pentawards(ペントアワード)」というベルギー生まれのパッケージデザイン賞がある。2007年と比較的最近のスタートにもかかわらず、世界的な賞として注目されているのだが、理由はその公平性にある。アメリカ、スウェーデン、イギリス、オーストラリア、フランス、ベルギー、カナダ、日本、韓国、中国から12人の審査員が、自国にいたままオンライン上で応募作品を評価する。そのため、デザイナーやスポンサー企業などの情報が入ることなく、パッケージデザインの創造的な質においてのみ、評価することができる。

さて、こういった賞にはどのような価値があるのか。「賞をとっても売れなければ意味がない」。これが、賞の社会的有用性は認めつつも、多くのマーケターの言うことだ。しかし、パッケージデザインに何らかのかかわりを持つ人々にとってこの賞は、世界でどのようなデザインが評価されているのかを知る貴重な機会だ。

世界で活躍するデザイナーが、どんなデザインを評価していて、それはなぜなのか?そこには、今後のグローバルマーケティングのヒントが隠されている。

例えば09年は、果物の形をしたユニークなティッシュ箱がトップ賞(ダイヤモンド賞)を受賞した。リーマンショックで世界の活気が失われた中、日常生活でも心温まるデザインが求められていたことの表れかもしれない。11年に受賞したペットボトルは、ガラス瓶のような質感の再現に成功しており、環境配慮の潮流が見て取れる。そして12年は、ロングセラー商品のダイエットコークのデザインを、よりシンボリックにDとKで表現したデザインが受賞した。新商品ばかりでなく、ロングセラー商品や自社のデザイン資産に目を向け、有効活用することに今、価値が認められているのではないか。

世界的なデザイナーが選び抜いたデザインには、こういった時代の気分やこれからの時代のヒントが隠されている。また、各国で活躍するパッケージデザイナーならば、こうした賞の結果から、さまざまなインスピレーションを受けるだろう。そのインスピレーションは、半年後、1年後、2年後に各商品のデザインに反映されて市場に登場する。賞には、未来のデザイントレンドの潮流をつくる力もあるのだ。さらに、各国のデザインレベルを知る機会でもある。この1~2年は中国人デザイナーの受賞もかなり多い。

そのほかの賞の意義としては、見るだけでなく出品することで、自社のデザイン力を評価してもらえることだ。たった200ユーロで、一流のクリエイターたちが自社のデザインを評価してくれるのは、考えてみれば安いものだ。ちなみに、10年のダイヤモンド賞は日本のホーユーが受賞し、12年にはサントリーのデザイナー・加藤芳夫氏が名誉賞を受賞している。実は日本のパッケージデザインも、グローバルに健闘しているのだ。

小川 亮氏(おがわ・まこと)
慶應義塾大学卒業後、キッコーマンに入社、宣伝部・販促企画部・市場調査部に勤務。同社退社後、慶應義塾大学大学院ビジネススクールにてMBA取得。現在、パッケージデザイン会社のアイ・コーポレーション代表取締役。飲料、食品、化粧品などの商品企画やパッケージデザインを多数手掛ける。


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