バレンタインの前日、2月13日。ネット媒体であるマイナビニュースに掲載されたニュースがある。タイトルは、「デートで紅茶を飲めば成功する!?会話が弾む飲料は紅茶だった!」。
記事の内容は以下のようなものだ。
リプトンを展開するユニリーバ・ジャパンは、相手との会話を弾ませるのに適した飲料の検証を、20~40代の男女(初対面・恋人・夫婦)10組20人を対象に行った。その結果、会話開始から30分間で脳の働きが最も活発で安定的だったのは、紅茶であることが分かった。検証は2013年1月に行い、杏林大学医学部の古賀良彦教授とコミュニケーションのスペシャリストである野口敏先生が監修の元で、紅茶・緑茶・コーヒー3種の飲料が脳機能に与える活性効果を調べた
という。
記事はユニリーバ・ジャパンが発信したPR資料によるものだ。ではなぜ、同社は紅茶の効用訴求を行ったのか。
紅茶ティーバッグカテゴリーのシェア第一位は「リプトン イエローラベル」。業界リーダーのポジションにあるわけだ。リーダーの戦い方の一つは、「周辺需要拡大」だ。緑茶、コーヒー飲用層を取り込んでカテゴリーが伸長すれば他社も恩恵を被るが、シェア最大のリーダーの売上が最も伸びるからだ。
他にもリーダーらしい訴求を行っている。「レンジでロイヤルミルクティー」という内容だ。資料には<リプトン イエローラベルは、ホチキスを使用していない~電子レンジOK!本格的なロイヤルミルクティーを手軽に楽しめます>とある。
多くのティーバッグは袋とヒモを繋ぐ部分にホチキスを使用している。故に、電子レンジに牛乳とティーバッグを入れてチンするわけにはいかない。ホチキス不使用で最もシェアが高いのはリプトンである。新しい飲み方が広まれば、やはりリプトンの使用量増大が実現する。
売り上げを伸ばす施策は、競合を叩くばかりが能ではない。自社・ブランドのポジションを活かした戦い方を効果的に行うことが肝要なのである。
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