今回の予定「ビジネス立ち上げの具体事例」を変更しまして、先日のアドタイ・デイズで担当したセッションの振り返りをまずしておきたいと思います。
「情報流通の変化とこれからの広告」という大きなテーマで、60分間のうち最初の自己紹介を除いた時間すべてをフリーのパネルディスカッションに費やす、というかなり挑戦的なものだったと思います。
このようなセミナー/カンファレンスでよくある形式は、「各パネラーがケーススタディーのスライドを紹介し、それを元に軽くディスカッション。全パネラーの発表が終わったら、モデレーターが全体に話しを振って、各パネラーにコメントを求め、まとめに入る」というものだと思います。
この形式の優れている点は、話の焦点が絞られるため、パネラー同士コメントもしやすく、またスライドもあるため、何を伝えたいのか聴講者に残しやすい、ということかと思います。反面、予定調和に終わりやすく、複数パネラーによるディスカッションの意味合いが薄くなる、ということが弱点かと思います。
このような講演を聞いていて、いつも「事例はためになるけど、もっと思い切ったディスカッションも聞いてみたいなあ」とも思うものなのですが、実際に自分がやってみるとこうも難しいものか、と実感しました。
さて具体的な内容に入っていきますが、当日の狙いとして「いわゆるマス広告的な手法以外のマーケティングコミュニケーションにあまり親和性がない方々を想定し、そういった聴講者の方々にとって新鮮な興味を提供したい」といった感じの趣旨でオファーを頂戴しました。
NAVERまとめ編集長の桜川さんが話す「情報流通の変化のリアリティ」を通奏低音としつつ、博報堂PR戦略局の木原さんの「人の感情に訴えかける強いアプローチ」に、梅田の「デジタル、ソーシャル、プロデュース周りのトピックス」が絡んでいくことで、多様な話題をカバーするのはもちろん、シナジーが出てくれば、ひいては新たな世代感が出てくれば、といったところが上記狙いに対するキャスティングの背景です(と推察しています)。
結果的には、「多様な話題をカバーする」点については、視点としてはそれなりに聴講者の方々にご提供できたのかな、と思っています。
1つ1つは新しい話題ではありませんが、一気に固まりとして扱うことで、また要素同士を繋げながらトークを拡げていくことで、ある程度は興味を持っていただける内容になったのかな、と思います。
(ただし、想定ターゲット外の方々からすると、新鮮味に欠けた点かも知れません)
そういったトークを(なんとか)紡いでいきながらの自分自身の発見として、
360(マルチタッチポイント展開によるリーチ最大化)
→365(エンゲージメント維持向上のための継続的なコミュニケーション)
と言われる中で、「ブランド自身の360度化(多面体化)」が必要、というかそうせざるを得ない環境にある(生活者を360度囲むというより、ブランドが360度囲まれている)ということをまず認識する必要がある、ということがありました。小さなシナジーではあったかな、と思います。
その「シナジー」ですが、事前に(もちろん)下打ち合わせをしていたのもあり、(聴講者の方々にどのように感じていただけたかはイマイチ図りかねるのですが)自分としてはそこまで大きな予想外な展開はなかったと思っています。
しかし1つだけ、「(数字のKPIだけでなく)感情のKPI的なものも、プロジェクトチーム内(自社だけでなく、クライアントや協力会社全体)で共有する必要があるのではないか?」といった趣旨が生まれてきたことは、少なくとも自分にとっては収穫だったかな、と思います。
一見、なんのことはないKPI/KGI(Key Goal Indicator)の関係、もしくはさらにその上流の目的の話しかな、とも思ったのですが、そういった話しに留まらず、もっと根源的なモチベーションの話しだったと自分は捉えています。
そのプロジェクトに対して、どれだけのモチベーションで取り組めるか、そういった関係者の想いの積み重ねがブランドを良くも悪くもするのだと思いました。360度ガラス張りの環境に囲まれる時代においては、それらの想いが染み出してくるものです。
この話しについては、いくらでも膨らませそうな感じがしていますので、とりあえずは、この辺りで。
また「世代感」については、ざっくりと30代、もしくはポストバブル世代、就職氷河期世代などと言われますが、なんとなくその感じは出ていたのでは、とは思います。が、むしろ自分としては、その中でも細かい差異があったのが面白かったです。
さて、そんな内容のセッションを実際にやってみての反省ですが、1つ大きく感じたのは「強く分かりやすくオリジナルなファクト、もしくはキーワード」を持つことが非常に重要だなあ、と思い知りました。
桜川さんのサービス運営者としての実感や、木原さんの力強くポンポン飛び出る独自視点に、壇上で話している身であるのにもかかわらず楽しませていただきました。
そんな中、自分としては、正直に丁寧に自分の言葉で語っているつもりなのですが、どうも普通の、普遍的な話しになって(聞こえて)しまっている気がして、話しながらその点が気が気ではなかった、のが正直な感想です。
以上、2013年度はもっと具体的に強く語れる事例(とその語り口)を獲得していこう、と気を新たにいたしました。
というわけで、そこに繋がっていくであろう話題にコラムを戻します。次回は「エージェンシーにおけるビジネス立ち上げの具体事例」を紹介いたします。
【梅田 亮「33歳、現場プロデューサーが考えるエージェンシーの未来」バックナンバー】
- 第10回 「クライアント業務」と「ビジネス立ち上げ」とのシナジー。―広告業の拡張をプロデュースするにあたって―(3/4)
- 第9回 エンゲージメントは「広告」ではなく「コミュニケーション」で生まれる。―「ニコニコ動画」さんとの対談(3)(2/4)
- 第8回 エンゲージメントは「広告」ではなく「コミュニケーション」で生まれる。―「ニコニコ動画」さんとの対談(2)(1/28)
- 第7回 エンゲージメントは「広告」ではなく「コミュニケーション」で生まれる。―「ニコニコ動画」さんとの対談(1)(1/21)
- 第6回 “Adverprise”(事業的広告)への拡張。 ―2013年の展望と、プロデューサーとしての抱負 (1/7)
- 第5回 示す、ゆだねる、話し合う、決める、というPDCAサイクル。―プロデューサーの現場から(ももクロファービー篇)(12/25)
- 第4回 流れを読むこと。問題を提起すること。―プロデューサーとしてのソーシャルメディア施策の捉え方(ポカリスエット)(12/10)
- 第3回 「商品も広告の一部」であると考える―商品開発という1つのプロデュース業(ついまる)(11/26)