目玉が飛び出すデンマークの古着屋さんの秘密

3月も終わりに近づき、わたしの暮らすデンマークの首都コペンハーゲンにも春がやって来ました…と言いたいところですが、この原稿を書いている今現在、窓の外は吹雪。ここ一週間の予報を見てみると、最高気温は平均で0度。最低気温は…マイナス10度。数字を見ているだけで体が凍えてきます。そして好奇心から東京の気温を調べてみた私ですが、20度という数字を見て、うらやましさに襲われ、すぐに後悔。桜に彩られた日本の春が恋しくてたまりません。

寒くて暗くて長ーいというのがデンマークの冬の気候であり、この厳しい寒さには世界一幸せな国民デンマーク人も毎年不幸せ。しかしこんなデンマークの冬も吹雪でない限りは、けっこう好きな私。なぜなら、寒さというのは適切な服装をすることで乗り越えられるということがデンマークに住み始めてからわかり、毎年少しずつ買い足すあたたかい冬用のコートやジャケットを味方に快適にぬくぬく過ごしているからです。

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毎年冬になると、それらは私のクローゼットにフリーマーケットや古着屋さんで手に入れた他のヴィンテージの洋服とともに仲良く並びます。そう、ワードローブのほとんどをヴィンテージでそろえている私は大のヴィンテージ好き。といっても、素敵に表現すれば「ヴィンテージ」であるものの、けっきょく実際は単なる「古着」。

しかしながら、デンマークの古着には予想もしないような物語が隠されています。

デンマークには赤十字やキリスト教会をベースとする古着の流通システムがあります。たとえば赤十字といえば、国際的に紛争や病気などで苦しむ人を助けるために寄付やボランティア活動に取り組んでいる組織ですが、知られてはいないようで実は古着屋さんというのも活動の一部なのです。

一般的にデンマークでは、大勢の人が、着なくなった洋服は地元の赤十字ショップに持っていきます。それらの服は選別されお店に並ぶものの、値段はTシャツ1枚500円程度ととてもお手頃。これらのお店で働く人はすべてボランティア、つまりただ働きで、だいたいはリタイアをしたお年寄りがお店に立っています。そしてお店の収益は赤十字の活動費にまわされます。つまりは古着を買うことが赤十字の活動支援につながり、ひょっとすると私が買うワンピース一枚が、エチオピアのある村で地域に今までなかった井戸の開設の手助けになるということもありえたりするというわけです。なんて素晴らしい!

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こんな古着屋さんはデンマーク中に数えきれないほどあるのですが、コペンハーゲンには、若者をターゲットにしてセレクトされた古着だけを扱うというコンセプトのもとに運営されている、おしゃれでヴィンテージと呼ぶのにふさわしいような赤十字のお店がふたつあります。そして、そのうちのひとつのお店、Fremtiden(デンマーク語で“未来”)で実はわたしは月に2回ボランティアとして働いています。コペンハーゲンのおしゃれっ子のなかでは流行りのホットなお店で、おしゃれなのにとってもリーズナブルな値段も影響してか、いつでもお客さんが絶えません。

ちょうど数日前に出勤した私も、仕事中にちゃっかり春用ジャケットをお買い上げ。早く出番が来ることを願うばかりです。クローゼットは古着でどんどん拡大していく一方、そろそろ私のコレクションにも限界がありそうです。

こんな古着の仕組みは私の知る限り日本には存在しない様子ですが、もしかしたらビジネスチャンスではないでしょうか。

【ニルセン 坂本舞「世界一幸せな国で暮らすということ」バックナンバー】

ニルセン 坂本舞
ニルセン 坂本舞

1993年埼玉県生まれ。中学卒業後までを日本で過ごし、その後15歳で父の母国デンマークに渡る。現在首都コペンハーゲン在住、国際バカロレアコースで学ぶかたわら、芸術活動に取り組んでいる。

ニルセン 坂本舞

1993年埼玉県生まれ。中学卒業後までを日本で過ごし、その後15歳で父の母国デンマークに渡る。現在首都コペンハーゲン在住、国際バカロレアコースで学ぶかたわら、芸術活動に取り組んでいる。

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