ソーシャルデザインとは何か?(3)自分らしさや個性を生かして輝く女性たち

ソーシャルデザイン

一人ひとりが日常の生活の中で、仕事の中で、何かに気づくことによって、その気づきから動くことによって、社会は大きく変えられます。私たちはそんな動きを、「希望をつくる仕事=ソーシャルデザイン」と呼びます。
広告マーケティングに関わる方々が、クリエイターの方々が、これまで培ってきた「伝える」「巻き込む」ノウハウによって、個人の気づきを社会の大きなうねりに変えることができます。

本連載は、3月22日に発売した書籍『希望をつくる仕事 ソーシャルデザイン』の出版にあわせて掲載します。

福井崇人(電通ソーシャル・デザイン・エンジン代表)

自分らしさの追究がソーシャルデザインを創造する

書籍『希望をつくる仕事 ソーシャルデザイン』では、いろいろな立場、いろいろな個性を持った方々にお会いしました。前回は、井上雄彦さんの言葉に触れましたが、今回は女性に注目してみたいと思います。

もったいない陶器市1
もったいない陶器市2

奈良県の主婦の樽井雅美さんが立ち上げたNPOが手がける陶磁器のリサイクル活動「もったいない陶器市」。“スイーツ好き”の気づきが、今では行政をも巻き込む活動に育った。

現在「日本ワンディッシュエイド協会」というNPOの副理事長を務めている樽井雅美さんという方がいます。奈良県で主婦をしていた方ですが、スイーツ好きが高じてブログで情報発信をしているうちにそのサイトが話題になり、お菓子ライターとして仕事を受けるようになりました。

ある時、「お菓子を食べる時の幸せな気持ちをおすそ分けしたい」という気持ちから、オリジナルの寄附付きプリンカップを作って販売することを思いつきます。でも、その過程で、プリンカップをはじめお菓子の容器に使われる陶磁器は、リサイクルできない不燃ごみとして扱われていることを知るのです。

「あらたにプリンカップを開発したら、無駄なゴミを増やしてしまうだけ」。そう気づいた樽井さんは、その問題を解決できる技術を持った会社を探し出して協力をお願いし、自ら旗振り役になって不要な陶磁器を集める「もったいない陶器市」を始めます。さらには行政とも連携して、地域にリサイクル活動を浸透させるに至っています。

主婦として生活していた方が、日常生活の中のちょっとした気づきから得たアイデアをもとに行動を起こし、そこから社会を変える新しい流れが生まれたのです。

肩書きのないまま、新しい立ち位置を創っていく

sakanoue

経営ストラテジストとして活躍する坂之上洋子さんは、自分のスキルや得意分野を磨いて、それを生かして新しい領域にチャレンジすることについて話した。

経営ストラテジストとしてご活躍中の坂之上洋子さんからは、自分のスキルや得意分野を生かして新しい領域に挑戦してみる、という生き方について伺いました。

坂之上さんは海外で建築デザイナーとして著名な賞を多数受賞した後、IT業界でも経営者として成功をおさめました。帰国後は、デザインや広告の仕事などもされていたそうですが、今では個人として自由な立場で、経営者や政治家、NPOの代表者にアドバイスを行うなど、さまざまな領域で活動を展開されています。

japan rising

坂之上さんは、観光庁ビジットジャパンのクリエイティブアドバイザーやテレビ番組のプロデュースなど官民問わず数多くのプロジェクトに携わり、各国要人や著名人を結びつける役割も担う。

ご自身がそんな風に活動できるのは、それまでの仕事を通じて磨いてきたスキルがあるからこそ。生きていくために必要なスキルを身につけて、その上でそのスキルを必要としている現場に入り込むことで、自分ならではの新しい立ち位置を築き、社会に貢献することができるかもしれませんかもしれません、ともおっしゃっていました。

また、プロジェクトで問題が起きた時の修復能力の高さがご自身の強みかもしれないと伺いました。どんなプロジェクトにもトラブルはつきものですが、みんなが元気をなくしている時に「さあ、ここから建て直しましょう」と切り替えていくことが得意なのだそうです。そういった能力は、たくさん仕事をして、経験を積み重ねることを通じて、坂之上さん自身はじめて気づくことのできた個性だということでした。その時々で自分ができることを精一杯やって、能力に磨きをかけていくことが、新しい可能性を切り拓く力となっていくということは、どのような人にも通じる強いメッセージだと思います。

気持ちに素直に生きること

私たちは、ソーシャルデザインを生み出すヒントは、一人ひとりが自分の持つ個性に気づき、それを生かして働くことにあると思っています。書籍では、ソーシャルクリエイターとしてのチェックリストを紹介しています。好奇心が旺盛であること、周りを巻き込む力があること……。いろいろありますが、最も大切なことは、気持ちに素直であることかもしれません。自分に正直に、そして平和的にものごとを進めていくしなやかな生き方は、女性が得意とするところかもしれないですね。ソーシャルの世界では、ますます女性が活躍していくのではないかと思います。 

坂之上さんも、自分のよいところを素直に認め、それを伸ばすことが大切だとおっしゃっていました。日本人は人と比べて足りないところ、不足しているところを伸ばそうとする傾向がありますが、そうではなくて、自分の持っている個性、素晴らしいところを磨くことにエネルギーを注ぐことが大切なのです。

女性に限らず、これからは多様な人たちの声に耳を傾け、ダイバーシティー(多様性)を尊重し、それを社会の活力の源としていくことが求められていると思います。この本が自分の知らなかった個性や強みを発見するきっかけを示すことができたら嬉しく思います。


「希望をつくる仕事 ソーシャルデザイン」発売記念イベント 第2弾!
12社の出版社が共催の「出張!ソーシャル書店」を開催します。著者によるリレートークも予定しています。
 会期 2013年4月12日(金)・13日(土)・14日(日)
 時間 11:00 – 20:00
 場所 渋谷ヒカリエ 8/COURT
 料金 無料
 事前申込 不要
詳細はこちら


福井崇人(ふくい・たかし)

電通ソーシャル・デザイン・エンジン代表。NPO2025 PROJECTの代表理事。クリエイティブディレクター/アートディレクター。主なソーシャルデザインに難民キャンプに古着を送るプロジェクト「FAMINE」、夏至の日のライトダウン、朝日新聞社「ジャーナリスト宣言」、野生トラ保護プロジェクト「Tigers Save TIGERS!」、ラブケーキプロジェクト、「COP10折り紙からのメッセージ」、カケアガレ!日本、他。カンヌ、NYADC、ADCなど受賞多数。金沢美術工芸大学、熊本大学、上智大学、宮城大学非常勤講師。書籍のプロデュースに 『たりないピース』(小学館)『Love Peace & Green たりないピース2』(小学館)『エコトバ』(小学館)『世界を変える仕事44』(ディスカバー21)『この子を救うのは、わたしかもしれない』(小学館)ほか。

【「ソーシャルデザインとは何か?」バックナンバー】

『希望をつくる仕事 ソーシャルデザイン』

社会に働きかけたいけれど具体的に何をすればよいか分からないでいる人、アイデアに行き詰まりを感じている人、学生や主婦など、すべての「社会をよりよくしたい」という想いを抱いているすべての人に贈るソーシャルデザインの入門書です。

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