レデイ薬局――価格訴求と価値訴求(3/4)

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「価格訴求と価値訴求」テーマの3回目、流通小売サイドの事例をご紹介したい。インタビュー取材に応じてもらったのはレデイ薬局 営業本部 ネットビジネス部 部長 境江勝也氏。

レデイ薬局 営業本部 ネットビジネス部 部長 境江勝也氏

レデイ薬局は、愛媛県松山市に本社を置き、四国・山陽地方を中心にドラッグ小売店(一般店、調剤店、一般・調剤併設店合計約200店舗)を展開。一般店では医薬品のほか健康志向品、化粧品、日用雑貨、食品、介護用品を販売する。「店舗スタッフは、お客様に対する相談サービスに集中し、本部はサポート役に徹する。」をモットーとした、徹底した対面販売サービスが特徴だ。顧客の再来店率はとても高く、顧客購入時の同社発行のポイントカードの利用率は8割に及ぶという。

アピールしきれていない「価値ある」商品を店頭接客とPOS連動会員メールで情報発信!

本当に「良いもの」を店頭で推奨


レデイ薬局の売場陳列例。「推奨品」のPOPは、素材と色が通常のPOPと異なり、フェイス数も増している。

「価値の訴求」ということでは、「私たちが推奨するものは、本当に良いものだけ」ということを、お客さまに信頼してもらうことから始まると思っています。「推奨品」「当店のオススメ品」はどこの流通小売でも展開していますが、中には小売側の利益優先感が出てしまっている店もあります。しかし、それは消費者に見透かされています。そこで私たちは、バイヤーが実際に使用、試食、体験してこれは「本当に良い」と選択した商品だけを推奨して販売することを徹底しています。

例えば台所用品のラップで当店が推奨しているのは、特殊な素材を使用していて高品質な有名ブランド品です。でも、ほかに比べると利益率は低い。それでも「良いもの」をしっかりと推奨することで、商品の回転率が上がって、メーカーの売上も伸び、店舗の信頼も向上、長期的には利益向上につながるのです。

ほかにも、あるカルシウムウエハースを当社バイヤーの勧めで「推奨品」にして「お菓子を食べるなら、カルシウムが摂れる方が良い」と価値訴求したところ、1カ月の売り上げが5倍に伸びたということがありました。

「推奨品」を展開するようになって気づいたことが、とても良い商品なのに、メーカーがうまくアピールしきれなくて埋もれている商品がたくさんあるということです。実際に使ってみて「これはいい!」と感じても、それがメーカーさんからの資料には書かれていなかったりすると、本当に歯がゆいですね。

それだけに、私たちが良い点を発見して推奨した商品は店頭・接客によって少しでも売り上げにつなげたいです。
 
一方の「価格訴求」についてですが、良いものは良いもの、価格は価格としっかりと分けて訴求しています。価格訴求の際は、当然周辺の競合店の価格も見ます。ただ、大切なのは、本当に良いとセレクトした商品を、売り場で目立つように訴求すること。そしてなぜ「良い商品」なのかを分かりやすくお客さまにお伝えするということです。

メーカーとの価値ある共創

メーカーさんとの共創ということで実施しているのが、今取引のあるメーカーさんから新商品や主力商品のサンプルを提供してもらい、その案内を当社の会員にメールを送って、店でサンプル品を受け取ってもらうという仕組みです。この場合、過去の購買履歴によって、その商品に関心を持ちそうな方にのみご案内します。その後、使用・試食しての感想についてアンケートに協力してもらうのですが、先日あるメーカーさんのドリンクを1万セットサンプリングしたところ、なんとアンケートの返信が7000もありました。それだけ、関心のある方が反応いただけたということで、私たちも驚きました。

アンケート回答だけでなく、その後売り上げがどうだったのかなどの情報をメーカーさんと共有することで、共創がよりふかまっていくと思います。

今後、我々が取り組んでいくのが、店頭のタブレット型端末とデジタルカタログの活用です。それによって、店頭に置いてないものでお客さまの要望があった商品をすぐに届けるというサービスを考えています。先々、店舗では扱えなかった介護ベッドや大型商品を取り扱えるようになれば、お客さまのニーズに一層応えられるのではと思っています。

まとめ

今回のお話で、とても印象に残ったことは、埋もれている商品が多くあること、そして、作り手であるメーカーですら売り方をわかっていないというお言葉でした。私どもマックスが、メーカー様のフィールドマーチャンダイジング活動を支援していてよく感じるのも、「売り方を考えているひとがいない」という点です。メーカー様から見れば、「売るのは小売業の役割だから考えてよ」となっていますし、小売業様から見れば、「自分で作ったモノなんだから売り方まで提案してよ」というギャップが非常に多い。こうなると、売り方を考えるひとが不在になってしまうわけですね。このギャップを埋めるために、製販協働で売り方を協議する場を作るだけでも、売れ方は改善できていくのではと思います。

売り方を協働で考え、売り手が本気で推奨したモノをお客様に納得して買って頂ければ、価格訴求の必要はなくなる。むしろ、この品質なら安いね!というように、お得にすら感じてもらえるわけです。もちろん、企業としても利益が取れる。つまり、価値訴求を行うことは、結果として価格訴求にも成功しているということです。これからは、そんな価値先行、価格後付の訴求方法で、消費者の満足+企業の収益を得るWin-Winな方法を真剣に考えていくことが大切です。

澤地正人(株式会社マックス 取締役)
澤地正人(株式会社マックス 取締役)
澤地正人(株式会社マックス 取締役)
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