前回、“O2O”を成立させる根本の要素は「共通キー」だということをお話ししました。Onlineで「共通キー」を発行しているか、Offlineで「共通キー」を発行しているかで、水が高いところから低いところへ流れるよう、“O2O”におけるユーザー動線が見えてくるはずです。
時には、水が低いところから、高いところに逆流することもあるかと思いますが、多くの場合は、高いところから低いところに落ちて行きます。
結論から入ると“O2O”における水が流れる高いところは、Onlineになります。
Onlineでの「登録(レジストレーション)」、Offlineでの「認証(オーセンティケーション)」から「トラッキング」へ
“O2O”の流れにおいては、「ユーザーの登録=共通キーの発行」「コンバージョンポイントでの認証」「ネクストアクションのためのトラッキング」のステップが必要だと考えています。
①Onlineでの「登録(レジストレーション)」
②Offlineでの「認証(オーセンティケーション)」
③「トラッキング」
という3つの要素で構成されています。
次は、このそれぞれの要素が、現在どのように使われているかを整理します。
①Onlineでの「登録(レジストレーション)」
一般的には、Webブラウザ経由の登録とアプリ経由の登録に大別されます。
スマートフォンで完結するアプリ(サービス)の場合、アプリのダウンロードの際にアプリ自身が共通キーを発行します。
Webや他アプリの情報を横断的に要するサービスでは、SNSアカウントなどを共通キーとして紐づけ汎用化している場合が最近では増えています。
■Onlineでの「登録」手法
- 電話番号やメールアドレスなどの連絡先の直接入力
- SNSアカウントの紐づけ(OAuth認証)
- アプリのダウンロード
- 特定サイトの訪問によるcookie付与
Offlineでの「認証」の手段は様々な手段が生まれていますが、主に、認証の距離範囲によって用いられるサービスが決定します。
【地域】
1.GPS
スマートフォン内蔵のGPSによる位置情報の把握。
【店舗・会場】
2.Wi-Fi
スマートフォン端末がWi-Fiスポット(ルーター)の電波を感知しエリアを把握。
3.音声認識
人の耳には聞こえない非可聴域の音波に特定の波形を施した「音声透かし」をスマートフォンのマイクで拾うことで特定エリアを訪れたことを認証可能。音の届き方の調整で特定店舗や棚の前などの限定が可能。
4.画像認識
QRコードを始めとしたスマートフォンのカメラによる画像認識により、共通キーを持っていることの認証や特定画像を撮影できる限定された場所にいることの認証が可能。最近では顔認識技術の精度向上にも注目。
【接触】
5.もぎり
紙と同様のインターフェイスを有したデジタルチケットやクーポンをもぎることで使用を確認。
6.QRコード認証
ユーザーに配られたQRコードを店舗側のリーダーで読み込むことで認証。
7.NFC(near field communication)
携帯電話にあらかじめ埋め込まれたNFCチップと交信を行う端末(FeliCaなど)で、実際のそのスマートフォンが端末に接触(数十センチの範囲に接近)した際に共通キーを持っていることを認証可能。
このような認証手段を、サービスの特性に合わせて活用します。
たとえば、一度登録を行った人が店舗に近づいたときにリマインドを行いたいときにはGPSを、実際に店舗に来店したことを認証したい時は音声認識を、さらにクーポンの利用などを把握したい場合は、QRコードなどの認証、決済を行いたい際はNFCなどを活用と使い分けることが重要です。
③トラッキング
①、②でご紹介した「登録」と「認証」のチャネルを広げることで、共通キーをユーザーのOnline/Offlineに紐づけてトラッキングすることが可能です。
これにより、個々のユーザーをターゲティングした広告出稿や、ユーザーの生活導線に沿った情報提供が可能になります。
また、個々のユーザーの属性を束ね、サービスの接触、利用状況を把握することで新規顧客の獲得や既存顧客の再訪率の向上などサービスのチューニングにもつなげることができます。
Online/Offlineで取得したデータを再度ユーザー、サービスにフィードバックすることが、“O2O”サービスを行う上でのポイントと言えるでしょう。
次回は、このような“O2O”を上手く活用しているサービスの紹介と、それぞれのサービスの関係性を紐解いていきます。
【吉羽 一高「汐留で使われているO2Oの教科書」バックナンバー】