MCとヤングロータスシルバーチームから見たADFEST2013舞台裏② ~Competition is Connection~

Who is the best “Story teller “ ?

ブリーフに書かれている「クリエイティブな才能」って何だろう。

はっとしました。そういえばこのワークショップで学んだのは、クリエイティブな才能を磨くためのキーワード、つまり、Story-telling。

そこで私たちは、「世界で1番のStory tellerは誰だろう?」という視点から企画を考えることに。世界で1番、ターゲットの心をつかむことができる、ドラマチックで想像力豊かで思慮深く楽しませ上手なStory tellerは誰だろう?どうしたら競合代理店が彼らを見つけだすより先に、ヘッドハンティングできるだろう?

私たちがスポットライトを当てたのは、“Pickup Artists”つまり、女の子の心をつかむ能力溢れんばかりのナンパ男です。彼らの溜まり場である大都市圏のバーで、秘密の面接を行うプロジェクト「Hunting the Hunter(ハンターをハンティングしよう)」を開始。

やり方は簡単。まず、美しく魅惑的な女性をハンティングカーで大都市のバーに派遣。こっそり侵入させます。実はこの女性、マッキャンのスパイ面接官。ナンパ男が近づいてくると、彼女はナンパ男のStory-tellingの才能をテストします。どれだけ粘り強くナンパするか?彼のストーリーはどれだけクリエイティブか?見事、ナンパ男が美女の心をキャッチしたら、彼女は電話番号をメモしたキスマーク付きのカードをそっと渡してくれます。

翌日、ナンパ男が当然のことながら、彼女に電話をかけると、出たのはマッキャンのスタッフ。「あなたのStory-tellingは素晴らしい。見事試験に合格です。私たちと働きませんか。」

世界中の大都市圏にハンティングカーを派遣し美女を侵入させることで、このプロジェクトは全世界にバイラル。生活者は、どこに美女が出現するのか、SNSでチェックすることができ、同時にマッキャンに連絡すれば自分の都市に美女を送りこんでもらうことも可能。マッキャンへの応募は飛躍的に伸び、クリエイティブな才能を内に秘めた才能ある人材を見つけることができる、というストーリーです。



おバカな企画ですが、根本に感じていた課題点として、世界的には著名なマッキャンも、日本では広告業界志望の若者が最初に入りたくなる会社ではないかもという真実に目を向けました。若者にとって人気No1は電通。日本以外にもそういう国はあるのではないか。だからこそまずは、マッキャンってジョークのわかる面白そうな会社かも、と噂にさせたかったのです。

そして翌日12:00。提出締め切り。

全チームが提出し、マッキャンの全講師陣6名と、若手全員の前でプレゼン。私たちは15カ国中、ラスト。緊張のあまり、どんな反応が得られたかも全くキャッチできていませんでした。1時間ほどの審査のあと、ファイナリスト3組が発表されました。

マスを使って優秀クリエーター名指しで指名するダイレクトマーケティングを提案したオークランド、シニカルなマレーシアの人々に対しインセンティブを設けて日々の妄想を発信させ「妄想で儲けよう」というメッセージとともに全国的なキャンペーンをすると提案したマレーシア、そして、最後に私たちの名前が読み上げられました。

普通に泣いてしまった私のもとに、それまで話したことのなかった香港チームのイケメンも「君らのは面白かった」「1番好き」と言ってくれました。単純すぎるかもしれませんが、世界共通のアイディアとそれを伝えようとする情熱は言語の壁を越えさせてくれるんだと実感した瞬間です。

その後、アドフェストでのファイナルプレゼンに向けて、「東京チームは少なくともMcCANNのつづりは修正してくれ」というとても親切なアドバイスをマッキャン講師陣に頂き、せっせとお直し。あたふたしている間に、続々と参加者がパタヤの会場に集まってきました。

いざファイナルプレゼン

胃が痛む中、メインステージにおいて全オーディエンスの前でのプレゼンです。

ナンパされ経験の少ない私ですが、自分たちのアイデアに合わせ精一杯女っぽい勝負服で挑みました。私たち東京チームをラストにファイナリスト3チームのプレゼンが終了。一般投票がなされた結果…ゴールドはマレーシアの男女チームに。広告を通してマレーシアを夢溢れる国にしていくという姿勢、24時間で作ったとは思えないほどの素晴らしいムービー、そしてプレゼンテーター二人の人間力。いうことなしの1位です。

私たちは、嬉しくも、悔しい、シルバーを頂きました。

ヤングなクリエーターとの再会に向けて

このワークショップを通して学んだStory-telling。ありがたいことに私達はそれを講義、課題、プレゼンを通して実体験することができました。

そしてもう1つの大きな発見は、ヤングロータスの若手たちの「自国への興味」の深さです。見事ゴールドを受賞したマレーシアチームのアイデアも国内の問題に向き合ったからこそ生まれたものです。そして23歳のパキスタンチームは、パキスタンでのインターネット普及率の低さ(人口普及率は17%)や、3G網の未導入によるアプリケーション浸透率の低さ、地域の言語の違いによる広告づくりの課題など、彼らが今後広告を作っていく上で無視できない「真実」に真正面から向き合っていました。

Googleの新興国市場開拓東南アジア担当の方も、Googleにとってパキスタンが重要な市場であることをパキスタンで行われたITイベントで述べています。今年アドフェストフィルム部門でゴールドを受賞した”I am Mumbai”をはじめ国内のモラルや社会問題を良くしていこうという広告が脚光を浴びているインドのように、パキスタンは若手から、広告を、国を、クリエイティブの力でよくしていこうという動きがすでに始まっているのだと感じました。

私たち日本の若手はどうだろう、と考えてしまいます。日本で広告を考える前に、日本の真実に向き合っているだろうか。企画の原点となる、裸の真実。そしてその真実に対しブランドが、どう人を勇気づけ、世界を幸せにしていくかという意志の表明。そのための、ソーシャルなコミュニケーション戦略とハイテクノロジーによるStory-telling。ヤングロータスで学んだことに真剣にぶつかって、これから先このワークショップでつながったアジア各国の未来を背負うクリエイターの皆と再会したとき自信をもって意見交換したいと心から思いました。キーワードは、「つまらない」からはじまる、ストーリーテリング。

それではここでビューティロータス土山にお戻しし、アドフェスト最終日の模様をレポートしてもらいます。
(次回に続く)


【「MCとヤングロータスシルバーチームから見たADFEST2013舞台裏」バックナンバー】

畠山侑子(大広 第1コミュニケーションデザイン局ブランドデザインセンター コピーライター・プランナー宣伝会議コピーライター養成講座上級コース、専門コース[山本クラス、谷山・井村・吉岡・照井クラス修了])
1984年酒屋の娘として誕生。2007年慶應義塾大学SFC卒業後、大広に入社。
プロモーション局にて飲料、製薬、流通系クライアントを中心に担当後、2009年クリエイティブ局へ。2013年日本代表としてアドフェスト・ヤングロータス・ワークショップに出場、シルバーを受賞。その他の受賞歴は、ラジオ広告電通賞グランプリ、ACCブロンズ等。現在はPanasonic、KIRIN等を担当。特技は腹話術。



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