Passbookの可能性と課題

このサービス自体が使われているのか? という話はありますが、今回は、アップルのiPhone5の発売(2012/9/21)とともにリリースされたPassbook(パスブック)について考えてみます。

※Passbookは正しくはiOS6に追加された機能で、発売数日前からiOS6にアップデートしたユーザーは使えました。

Passbookの簡単な説明

Passbookは、アップルのiPhone(iOS)に搭載されたパス管理ツールとされています。

パスというのは、アップルがいうところのクーポンやチケット、会員証を含めたものという定義になっていて、それぞれにパスのフォーマットが用意されています。

パスの管理自体は、2次元バーコードで管理されており、日本国内では一般的なQRコードを用いて管理されていますが、QRコードの認証を行わず「見せるだけクーポン」としての利用も行われているケースが多いのが実状です。

※Passbookで採用されているQRコードの管理のメリット・デメリットは、次回以降触れて行きます。

Passbookは、iPhoneの標準アプリに搭載されているということが最大のメリットで、アプリなどを別途インストールする必要なく、safariなどのブラウザから1タップでPassbookにパス(クーポン)が保存されます。また、Passbookアプリを立ち上げていなくても、パスの使用エリアに入ると位置情報を取得してプッシュ通知を行うことができるなどの一般的なアプリではできないアップル標準アプリだからこそできる機能は魅力的な要素になっています。

普及しないPassbookとその可能性

パスの配布がiTunesを介さないということでアップル側がパスの流通管理をできないことが理由のひとつかもしれませんが、アップル側としては、あくまでもプロトコル整理という意味合いが強いのか、2次元コードの発行・管理などはあくまで企業側(パス発行者)任せという管理をしています。

魅力的な機能はいくつもあるPassbookですが、ユーザー・企業側それぞれ、Passbookを魅力的に使える体験がまだ少なく、実利用は限定的な状況が続いていますが、この手のアプローチはいくつかの競合プレイヤーも現れており、クーポンやチケットを統合管理していくアプリケーションレベルでの戦いは始まっています。

電子チケット・電子クーポンが普及すると、Webサイトやサービスで購入・取得したチケット・クーポンが散在することになります。

散在している状態だとユーザーは、自分の持っているチケット・クーポンがどこに行ったのかがわからなくなり、使用にあたって支障を来します。

Passbookのアプローチは、アップルの手のひらの中でありつつも、統合管理できるような環境を提供していますが、O2Oのひとつの形である電子チケット・クーポンの戦いは、実は統合サービスのポジションを取ることにあるのかもしれません。

Passbook補足

(Passbookとは)

  • iOS6に標準搭載されているパス管理アプリ。
  • iPhoneの電話アプリと同様に削除できないアプリ。

※パス:クーポン、航空券、会員証

(優位点)

  • iOS6以降の端末に標準搭載されているためアプリケーションのインストールをユーザーに強いることなくO2O施策が可能。
  • Passbookを利用者が意識することなく使える。
  • パスは電子チケットのため利用者の利用状況にあわせ、随時更新が可能。
  • お店の近くに行くと位置情報をもとにお知らせしてくれるので、クーポンをポケットにいれたまま使うことを忘れて帰宅してしまうという状況を回避できる。

(課題)

  • Passbookの認知度が低い。
  • 便利な使い方を広く知ってもらう必要がある。
  • パスの発行、配布は利用者自身が行う必要があり発行の際にはAppleデベロッパーアカウントへの登録が必要で、発行者が気軽に利用できる状況にない。
  • また、日本国内ではこれまでのプリントアウトをして使うクーポンの置き換えとしてパスを利用しているケースが多く電子チケットの優位性を最大限に活用できているとは言いがたい。
  • パスに表示できるバーコードが2次元バーコードに限られており日本のPOS端末で利用されている1次元バーコードと異なるためパスをPOS端末で読み取ることができない。
  • そのため、現状のパスの仕様では、POS連携が困難であり店舗で読み取り端末を用意する必要がある。

第5回「店舗オペを阻害しないO2O」はこちら


【吉羽 一高「汐留で使われているO2Oの教科書」バックナンバー】

吉羽 一高(電通デジタル・ビジネス局 アート・ディレクター)
吉羽 一高(電通デジタル・ビジネス局 アート・ディレクター)

電通デジタル・ビジネス局メディア企画部、アート・ディレクター。
SEMやYou Tubeのメディア価値測定など新しい価値尺度の算出やテレビと組み合わせたリッチメディア広告の立ち上げなどを経て、現在は、Google、Facebook、Twitterなどのプラットフォームを活用したコミュニケーション設計・プロダクト開発、iPhone/Android向けのアプリケーション制作担当。また、テレビ・新聞・雑誌などのメディアとインターネットのクロスメディア戦略やサービス開発なども手がける。

吉羽 一高(電通デジタル・ビジネス局 アート・ディレクター)

電通デジタル・ビジネス局メディア企画部、アート・ディレクター。
SEMやYou Tubeのメディア価値測定など新しい価値尺度の算出やテレビと組み合わせたリッチメディア広告の立ち上げなどを経て、現在は、Google、Facebook、Twitterなどのプラットフォームを活用したコミュニケーション設計・プロダクト開発、iPhone/Android向けのアプリケーション制作担当。また、テレビ・新聞・雑誌などのメディアとインターネットのクロスメディア戦略やサービス開発なども手がける。

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