<登壇者>
Yahoo! JAPAN マーケティングソリューションカンパニー 新規事業本部 本部長 津幡靖久氏
東急ハンズ ITコマース部 EC企画課ディレクター 緒方 恵氏
──現在のO2Oの取り組み状況は?
津幡 当社のO2Oの取り組みは、ヤフーにウェブ広告をすでに出している企業に向けて、ウェブから店頭に来てもらう販促と、その後の決済とがあり、私は「集客・販促」の部分を担っています。昨年から、ソフトバンクテレコム「ウルトラ集客」という仕組みに取り組んでいます。これは、ヤフー・ジャパンの広告枠を使って、「店舗に行くと飲料が1本もらえる」といったインセンティブをフックに来店を促します。飲料メーカー、アパレルの製造小売業などにすでに活用されており、最近では、イオンさんにこの仕組みを本格導入して頂けることになりました。
緒方 当社の場合、顧客の買い物体験をもっと便利にするためにネットとリアルをシームレスにつなぐことを目指して取り組みを始めたところです。昨年12月にリニューアルしたネットストアでは、サイトの上部に店舗のPOSデータと連動したコーナーを設置。「どこの店で何が売れた」という情報が商品写真とともに次々と流れていきます。東急ハンズは、店内における商品との偶然の出会いが魅力の一つなので、それをウェブでも経験、体験してもらうのが狙いです。そして、商品画像をクリックすると、店舗の在庫状況を表示。お客さまにとって一番ストレスなのが、「店舗に行ったら商品が置いていなかった」ということなので、それを防ぐためにも在庫データの連結というのはとても大切です。
──O2Oの施策は売り上げアップに貢献していますか?
緒方 以前、ウェブアプリを試すと5%オフのクーポンを発行する情報をフェイスブックにアップしましたが、あまり広がらず、商品情報の方が「いいね!」がついたことがありました。つまり、当社のお客さまは単なる値引きを求めていないのです。我々に求められているのは、豊富な商品知識に基づく接客や、さまざまなニーズに応えられる幅広い品ぞろえ。だからO2Oにおいてもそれが来店につながると思います。数値として出すのは難しいですが、ネットで情報を出したことで店内イベントがすぐに埋まるなど、情報提供による購買意欲の向上、来店の促進効果というのは確実にあると感じています。
津幡 売れる、来店につながる事例が出てくる一方で、「O2Oはクーポンなどで瞬間的に集客する」というイメージが強いのも事実です。我々が目指しているのは、その人にとってより最適なレコメンドを行いながらロイヤリティを向上させること。一回だけでは終わらせず、リピーターやロイヤルカスタマーの醸成につながるような販促活動のお手伝いをすることです。
──O2O実施における社内体制について聞かせてください。
緒方 店舗におけるオペレーションの難しさは確かにあります。また、ネット部門とリアルの部門とでは当然リテラシーも違います。POS通過による絶対的な数値実績を示すことが難しい中では、リアル部門のリテラシーに合わせ、ソーシャルメディアにおけるお客さまの声をしっかり届けるなどといった、こまめなコミュニケーションも欠かせません。
津幡 O2O施策をどの部門の予算で行うかが企業によってバラバラと感じます。来店とその後の売り上げにつながることから「販促予算」と思いがちですが、広告・宣伝部門が判断することもあります。また、「折込チラシ」に割かれている予算は非常に大きいので、この予算の10%でもO2Oに振り向けてもらおうと提案するのですが、思いのほか現場の「チラシだけは削減できない」という考えは根強いですね。さらに、O2O施策は、自動車ディーラーや住宅展示場など、高価格帯の業界にも広がっています。今後は、来てほしい層に対して、どんなインセンティブを設定するかといった設計も大切になります。
位置情報と結びついたO2O施策が今後の発展のカギ
津幡 先ほどのネットでの在庫情報はどこまで徹底しているんですか?
緒方 検索はやはり購買に結びつきやすいので、当社の「ネットストア」と「コレカモ」という商品検索の仕組みを使って店舗全体としっかり連動させています。
津幡 こうした情報がオンラインにあると、例えば街中でスマホを使ってヤフー・ジャパンで商品を検索すると“近くの店の在庫が分かる”という世界を実現できる。検索に今いる場所を紐づけて在庫情報まで出せれば、より購買に結びつく可能性が
強い。
緒方 そうですね。やはり購買においては、外出先などで困ることが多いので、ジオ情報(位置情報・地理情報)と結びつくと非常に便利です。
津幡 「ウルトラ集客」においても、スマホの方が明らかにPCよりCTRが高い。外出先でスマホを使っている可能性が高いので、その場ですぐに当選結果を出してより行動につなげるといった仕組みに力を入れます。スマホの検索結果を購買につなげるというのは、来年あたりから増えてくるのではないでしょうか。
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