現在試験休み中のわたしは毎日図書館に通って勉強漬け。
デンマークでは、新年度は8月の半ばから9月の頭頃にかけて始まります。そのため、年度末の5月頃に授業が全て終わってしまうと、学校は試験休みに入り、学生たちは自宅などで試験に向けて勉強をし始めるのです。
デンマークの試験方式といえば、マークシートや選択問題なんていうのはありえない話。そのかわり、筆記試験では、5時間程度の試験時間内に、論文やエッセーを書かなければいけないのが一般的で、そんな場面では、暗記したことや、借り物の知識などではなく、自ら理解をして自分の言葉で表現する能力が問われます。そのために、デンマーク語で「勉強する」という言葉、læseには「読む」という意味も含まれているほど、試験休み中のデンマーク学生は何百ページも教科書や参考書、ネット上の関連サイトなどまで読んで読んで読みつくし、試験に備えます。
今日も勉強がひと段落して図書館から帰った私を、自宅では、フラットメイトのセバスチャンとシモーネが夕ご飯を用意して待っていてくれました。
私は、コペンハーゲン市内にある3LDKのフラットを、セバスチャン(19歳)とシモーネ(21歳)とシェアして暮らしています。私たちが3人で暮らすこのフラットは、実は、セバスチャンの所有物。彼は、18歳の頃に、借りて住むよりは投資するほうが損がなくていい、と考えて銀行からお金を借りて、約800万円のこの物件を30年のローンを組んで買ったのです。そしてシモーネと私は、フラットの主であるセバスチャンに、毎月一部屋分の家賃(約5万円)を払って、ここに暮らしているというわけなのです。
このようにデンマークでは、若い学生が思い切ってフラットを買ってしまう、というのはこれといって珍しい話ではありません。
しかし私たちのような学生が一体どうやって生計を建てているのだろう、と不思議に思う方、ここが世界一幸せな国だということを忘れてはいけません。
北欧の国々には充実した福祉制度があるのは、おそらくよく聞く話でしょう。デンマーク国民は、高い税金負担をしなければいけないものの、その見返りには、医療費と教育費(大学も含める)は全て無料という恩恵を受けることができます。
しかしほかにも、意外と知られていない驚くべきデンマークの福祉制度のひとつに、学生給付金制度があります。これは、政府による18歳以上の学生を対象とした月々の生活費の援助で、高校生、また20歳未満のうちは、親の収入や18歳未満の兄弟の有無よって、家族と一緒に暮らしていれば、約2万1000円から4万9000円の間、私のように実家を出て自分で暮らしていれば、6万3000円から9万9000円の間で、なんと、毎月生活費が支給されるのです。大学生、または20歳以上になると、一部例外はあるものの、一律して毎月約9万9000円が援助されるという、実に学生に優しい制度が、この福祉大国には存在します。(注)
デンマークの学生たちが、バイトに時間をとられずに学業に集中できて、幸せに暮らせる理由である、学生給付金。これで月々の家賃をまかなって暮らしいけてる私にとっても、政府からもらう生活費は、私をデンマークに引き留め、日本から遠ざけている理由であるといっても過言ではありません。
(注)ここで提示した学生給付金の金額は、税金支払い前のものです。