また、被災地域のみならず、日本全体への経済面での影響を減じるには、企業BCP(事業継続計画)の策定、国内外のサプライチェーン強化、重要なデータやシステムの分散管理等の主に企業における対策が重要であり、その際、一企業内にとどまらず、企業間や業種を超えた連携についても検討することがこれから大切になるとの内容が盛り込まれた。
このように、南海トラフ巨大地震の特徴は、局地的に強い揺れを観測した阪神・淡路大震災と津波による大被害をもたらした東日本大震災の両方の特徴を併せ持ち、さらにその規模を非常に大きくしたもので、津波からの人命の確保、ライフライン・インフラ・住宅・一般建物等への甚大な被害の復旧、6800万に及ぶ被災者数など超広域にわたる被害への対応、国内外の経済に及ぼす甚大な影響の回避などが求められ、多種多様な被害を想定して、国、自治体、企業間など新たな防災体制の見直しが必要との見解が示された。
また、最終報告では、震度6弱以上または浸水30センチメートル以上の面積が10ヘクタール以上の自治体は30都道府県734市区町村に達し、面積で全国の約32%、人口で約53%の超広域に及ぶと推計し、新たな法的枠組みや達成時期を明記した防災戦略を国としてしっかり立案する必要性を強調している。
被災地では行政の支援が行き届かないエリアが発生し、被災者自身がサバイバルのための食料・水などについて最低でも1週間以上を確保できるよう今から備蓄することを薦めている。
避難所については、発生後1週間で950万人の避難者が出て、大幅に不足し、避難所の優先順位をつける「避難所トリアージ(選別)」という対策を講じることを盛り込み、自宅の被害が軽微な被災者には帰宅を促すなど、今年度中に対策大綱をまとめるとしている。
被害の様相では、項目別に「建物被害」、「屋外転倒物、落下物」、「人的被害」、「ライフライン被害」、「交通施設被害」、「生活への影響」、「災害廃棄物等」、「その他の被害(21項目)」について、それぞれ「地震発生直後」、「1日後の状況」、「3日後の状況」、「1週間後の状況」、「1カ月後の状況」を基本として、時系列に想定される様相をとりまとめている。
また、東日本大震災の被害状況をベースとした被害様相よりも過酷な「更に厳しい被害様相」について、「人的・物的資源の不足」、「より厳しいハザードの発生」、「被害拡大をもたらすその他の事象の発生」、「より厳しい環境下での被害発生」、「二次被害の発生」及び「影響の波及」の要因別に分類し説示するとともに、被害様相に対応する「主な防災・減災対策」についても、「予防対策」、「応急・復旧対策」及び「過酷事象対策」の対策別に分類し、とりまとめられている。
多くの企業で地震に対するBCPが既に策定されていることと考えるが、今回の中央防災会議の最終報告は、その見直しにおいて非常に参考となる。製造者であれば、(部品・原材料等の)調達、(加工を含む)生産、納品までの流れの中で、自らの管理下(支配下)にある業務が災害時に機能しても、調達元や納品先が事業継続できなければ、結局自らの事業も停止する、という現実に対してどう対策を講じるべきか。自治体や業種・業界を超えた他の企業との連携など、他者を巻き込んだ大枠での体制構築を真剣に考えなければならないときが来ている。