顧客に選ばれる、おもてなし経営企業の販促手法とは

販促会議

『販促会議』2013年7月号(6月1日発売)より

経済産業省は、「おもてなし経営企業選」を3月に発表し、中小企業の高付加価値サービスによる差異化を促進していく取り組みを行っている。「販促会議」では、「おもてなし経営企業」として選定された企業が、顧客との関係性を深めるために、どのようなプロモーションを実践しているのか、取材を行った。ここではその掲載企業の一例を紹介する。

ネイルサービスにヘアアレンジ、通うのが楽しみになる教習所

入所者数が都内2位の武蔵境自動車教習所(東京都武蔵野市)。入所者の半数は卒業生からの紹介だという。

同社の特長は教習所を「教育業ではなくサービス業」と打ち出していること。教官を「インストラクター」と呼び、生徒は「お客さま」として迎える。教習の待ち時間にも楽しめるようにと、ネイルサービスやヘアアレンジ教室など日替わりのサービスをフロアの一角で開催。教習生は100円で利用できる。また教習所が思い出の場になるようにと、一人ひとりに卒業アルバムも渡す。

毎年、夏に開催するイベント「サマーフェスティバル」には1万人が来場し、地域住民の思い出づくりと新規顧客拡大の場になっている。

手書きツールでつながりを深めるラーメン店

カウンターを仕切りで区切り、ラーメンを集中して食べてもらうための環境を追求する一蘭(福岡県福岡市)。

直接スタッフが顧客の食べている姿を見られない中で、同社が大切にしているのが顧客の声を集めるアンケートだ。つい答えたくなるよう、アンケート用紙は手書き風で、「こんにちは」と担当者の挨拶から始まる。担当者が一蘭に出会った時のエピソード、思い出が書かれ、最後には顧客に向け「想い出はつくれましたか?おもてなしはいかがでしたか?」と結ぶ。

マーケティングデータをとるための無機質な用紙ではく、語り掛けるような形にしたことで顧客が進んで記入するようになり、満足しなかった点については、より具体的に書かれることも増えた。

例えば「いつも通っている〇〇店と味が違うと感じた」という指摘には、アンケートが書かれた時間帯の厨房カメラの録画映像を検証するなど、顧客への対応ができるようになったという。

施主が「男泣きする」工務店のおもてなし

人生最大の買い物と言われる家。家を建てると、ほとんどの施主が感動して号泣するという工務店がある。木造の注文住宅を中心に扱う都田建設(静岡県浜松市)だ。同社は年間どれだけの顧客が、完成した家に満足し、感動の涙を流すかを目標として掲げる。

そんな都田建設にあるルールが「119対応」だ。顧客から問い合わせのあった時に、担当のスタッフが1時間19分以内に訪ねるというもの。そのため「119対応」ができるエリアの仕事しかしない。

朝礼では、業務報告はなく、その日に来る顧客について、例えば子どもの名前などの情報を共有。顧客が家を建てるまでに、スタッフと20~30回ほど会う機会があるが、心からのおもてなしができるよう徹底させている。

家を建てた後も、顧客との関係を持ち続けており、「ゴールドライン」と呼ばれる電話番号は、家を完成した顧客だけしか知らない。同社ではこの電話への対応が何よりも優先される。無料のホームメンテナンスセミナーも行っており、長期的な関係を築くことで、顧客が別の顧客を紹介するといった好循環が生まれている。

消費増税を控え、価格競争に陥らずとも顧客に選んでもらえるような販促手法を模索している企業にとって、ここで取り上げたような顧客との関係性を築く「おもてなし」の販促手法は、これまで以上に重要となってきている。

written by hansokukaigi
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