耐久消費財をパッケージデザインで売る——「販促会議7月号」より

パッケージのメディア特徴は購買に近いことだ。パッケージを見る人は、商品の購入をその場で検討している人である。それだけ、販売促進におけるパッケージデザインの役割は大きい。パッケージデザインを手掛けるアイ・コーポレーションの小川亮氏に、優れたパッケージを紹介してもらう。

ここでは、『販促会議』2013年7月号に掲載中の連載「販促NOW-パッケージ」の全文を転載します。


(文:アイ・コーポレーション 代表取締役 小川 亮)

レゴブロックのように縦方向に積み重ねられる「アイスウォッチ」のパッケージ。各売り場の広さなどの条件に合わせ、最も訴求効果の高い陳列を自由につくることができる。

時計のような耐久消費財を売る際に、パッケージデザインにはどのような役割があるのか。ベルギー生まれの「アイスウォッチ」は、この問いに答えてくれる好例と言える。

この腕時計は多彩な色や素材、形を組み合わせたデザインが特徴で、「手頃な価格と上質なデザイン」というコンセプトのもと世界各国で販売されている。毎年さまざまなバリエーションが導入され、新モデルの発売を楽しみにしているファンも多い。商品にデザイン性と話題性があり、機械部分はシチズンと同じミヨタが作っているため機能面でも安心感がある。しかし、実はこの商品のヒットには、パッケージデザインも一役買っている。

アイスウォッチのパッケージはブロックの形をしており、シリコンラバー素材で触り心地が良く、存在感がある。また、シリコンラバーの上部と、クリアケースでできた下部との二つのパーツによる組み立て式になっており、パッケージに入った腕時計は、まるでブロック内に浮いているように見える。売り場ではブロックを組み立てる要領で、店舗ごとにさまざまな陳列が展開されており、時計とパッケージの色がすべて統一されているため、圧倒的な存在感を演出している。

最大のポイントは、店頭における陳列効果の高さだろう。複数のブロックを自由に組み合わせることで、各店舗の事情に合った視認性の高い売り場をつくることができる。これには、カラーバリエーションの多様さも貢献している。アイスウォッチというブランドを形成するにも、このパッケージは腕時計単体にプラスして大きなイメージを形成している。

例えば、耐久消費財のパッケージを単にコストと判断し、どんな商品にも対応できる企業ロゴ入りの化粧箱などを使っていては、この売り場効果とブランド形成効果は得られないだろう。過去の調査研究によると、上質なパッケージデザインには、中身の品質の高さを感じさせる効果があると証明されている。アイスボックスのパッケージは、売り場での視認性に加え、商品そのものの価値を高める効果もあるだろう。プレゼントとして贈る場合にも、このパッケージのユニークさは話題になるに違いない。また、買った後の効果も大きい。このパッケージの上面には穴が開いており、貯金箱として部屋に置いておくことができるのだ。

売り場での注目度を高め、商品の質的効果を上げる。ブランドのイメージを形成する。プレゼント需要を取り込む。貯金箱として使ってもらうことで、時計とともに購入者の近くに存在し続ける……時計のような嗜好性、機能性の重要度が高い商品において、パッケージでできることのヒントが盛りだくさんの商品だ。

パッケージには「広告で見る」「店頭で見て触る」「使う」「廃棄する」など、さまざまな経験価値をつくるチャンスがある。こういった経験価値をうまく設計することで、耐久消費財でもパッケージによる販促効果を十分見込めるのである。

小川 亮氏(おがわ・まこと)
慶應義塾大学卒業後、キッコーマンに入社、宣伝部・販促企画部・市場調査部に勤務。同社退社後、慶應義塾大学大学院ビジネススクールにてMBA取得。現在、パッケージデザイン会社のアイ・コーポレーション代表取締役。飲料、食品、化粧品などの商品企画やパッケージデザインを多数手掛ける。


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written by hansokukaigi
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