売り場で埋もれている商品の「価値」は現場から発掘する!「売れる店頭研究会2013」 価格訴求と価値訴求(まとめ)

「売れる店頭研究会2013」の第1回テーマ「価格訴求と価値訴求」は、学習院大学上田教授と、企業の取り組み事例としてレディ薬局、西友の協力を得て、4度にわたるコラムを掲載することができました。今回は、第1回テーマの「まとめ」として、取材を通して新たに気付かされたこと、考えたことなどを記しておきたいと思います。

価値の訴求は値ごろ感も醸成

今回のテーマの取材で、特に印象に残っているのが、レディ薬局さん(3/4)の「良い商品なのに、メーカーがうまくアピールしきれなくて埋もれている商品がたくさんある」という話です。この話がキーだと思いました。上田教授が実証実験なさったコープサッポロさっぽろの事例(2/4)にも、広告では訴求しきれていない商品(埋もれた商品)を店頭からの情報発信を工夫することにより売上増につなげた実例が登場しました。これは、メーカーにしてみれば、販促費や広告費をかけずに売り上げがアップするという、今後、非常に可能性を感じる話だと思いました。

価格訴求と価値訴求というと、「どちらが良いのか?」という目線になりがちですが、西友さんの新PB戦略(4/4)のように、両立もしくは双方の訴求が可能なのではと感じました。

アピールしきれていない商品の「価値」をまず発掘するところから始まり、その「価値」を伝えるための売り方を開発し、売り場で店頭実現していく。そういう流れをつくることで、商品の良さがお客さまに伝わっていくと思います。

こうした流れを踏まえた「価値」の訴求というのは、結果として、「それなら高くないな、お手頃だな」と思わせる「価格」訴求につながっていくのです。この点は、今回の一連の取材を通してとても新鮮に感じたところでした。

西友さんの「みなさまのお墨付き」はとても手間ひまがかかっています。第三者による商品テストの仕組み、少しでも基準に達しなければ改良する、商品化しても1.5年から2年単位で再テストする、そういう手間によって生まれたことを伝えるというのは「価値訴求」そのものです。それでいて値ごろ感を失わずに「価格訴求」を実現しており、たいへん他社にとっても参考になる試みだと思いました。

現場からの「価値」の発掘

「価値」の訴求と言っても、実際にはエリアとか商品カテゴリー、ターゲット層など様々な要素によって、「価値」は変わります。弊社では、売り場で「この商品の価値はどこにあるのか」を起点に考えるようにしています。なぜなら、売り場において“これが正解だ”という回答はないからです。結局、試行錯誤しながら、個店に最適な売り方の事例を蓄積していくしかないと思っています。

例えば、温熱用器具の商材について、現場の弊社スタッフの「生理前の女性は体を温めるという需要があるのではないか」という発想から、生理用品とのクロスMD売り場を構築し、売上がアップしたことがあります。このような、現場からの発想を個店レベルで実証して、小売本部に売り方提案としてフィードバックして行くという店頭起点の流れも今後は必要不可欠だと思います。

また、いま考えていることは、もっと商談や店頭の現場にデータを分析する力とかマーケティング的な志向を浸透させることができないかということです。そうすれば現場に発想力を培うことができ、成功レベルが上がって行くと思うのです。その一つの実務的手法に、メーカー営業支援の一つとして現場に、セルフ分析型BIツールを載せたタブレット端末の導入を考えています。これによりもっと、現場がロジカルに価値を発掘し、売り方を発想していけるので、店頭での成功率を高めていけると考えています。
  
というように、商品の価値を発掘するためには、現場の発想力や実行力を強化することが重要です。そのために小売・メーカーは共に、データ分析や提案づくりの機能構築、協働して考えられる場や、実証実験できる環境など、現場に投資をしていくことが最も重要です。商品の価値は現場から。そして、価値は価格の訴求にも通ずる。これが本テーマにおけるキーポイントだと思います。

澤地正人(株式会社マックス 取締役)
澤地正人(株式会社マックス 取締役)
澤地正人(株式会社マックス 取締役)
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