知り合ったばかりなのに…
「次のSWATにはいっしょに参加できない。実は会社を移ったんだ」ジョナサンからのさよならは突然だった。
僕は第3回のコラムで、カナダのクリエイターたちといっしょに、世界のクリエイターが集まる合宿SWATに参加した話を書いたが、そのジョナサンから、会社を移るというメールが届いた。新しい会社のアドレスからだった。彼はACD(アソシエイトクリエイティブディレクター)だったが、新しい会社ではCDだ。おめでとう、ジョナサン!コピーライター出身同士で、雑談も楽しかったので、いっしょに仕事できないのはさびしいのだが。
「撮影でロサンゼルスに行くことがあると思うから、トモ、そのときはいっしょにごはん食べよう」と書いてくれていた。楽しみにしてるよ、ジョナサン。今住んでいるマンションの近くに、美味しいイタリアンの店を見つけたから、そこに行こう。
移籍しないクリエイターはいない。
僕は慣れてなかったので、ちょっと感傷的になりすぎたかもしれない。みんな、移籍するのだ。
僕たちの面倒を見てくれているマットとラファエルも、違うエージェンシーから1年前にシャイアットに来た。チームのCDであるカールも2年前にシャイアットに着任した。そして、シャイアットのCCO(チーフクリエイティブオフィサー)であるジョンも、来てまだ1年経っていない。ジョンは前のエージェンシーでコークの素晴らしいキャンペーンを手がけ、今シャイアットでペプシチームの総指揮をとっている。
みんなダイナミックに移籍する。シャイアットはロサンゼルスだが、アメリカのエージェンシーはニューヨークをはじめ、マイアミ、ポートランド…いろんな都市にある。みんなチャンスを求めて都市を、国境を飛び越える。カールはオーストラリア出身。カールとコンビを組んでいるCDのティトはアルゼンチン出身。ラファエルはドイツ人。
考えてみれば、それを可能にしているのは英語という共通語だ。シャイアットの広告は、世界各国からクリエイターが集まるからか、言葉がSimple&Boldで、分かりやすいものが多いと思う。
僕たち日本のクリエイターは、日本語で仕事をし、大きなエージェンシーは東京に集中し、会社をあまり移籍しない。僕たち日本人は、アメリカで仕事をする可能性をどれくらい持っているのだろうか?
(次ページ「ロスの日本人CD。」へ続く)