伊藤:ええ。いま頭を悩ませているのは、10万人に届く自分という商品の見せ方です。たとえばハイチュウは、毎シーズン、リニューアルごとに、今回は「フレーバーが増えた」と言うのか、「おいしくなった」と言うのか、はたまた「増量した」と言うのか。いろいろな要素の中から、どのメッセージを伝えるのが、いま最も消費者に刺さるのかを考えます。
同様に、候補者(政治家)としての「伊藤ようすけ」の売りは何なのか? を考えています。政治家としてやりたいことは明確ですが、それをただダイレクトに言ったところで “伝わる”とは限らない。自分のどこを出したら、やりたいことをやれそうなのか。毎晩応援してくれる仲間たちと話し合っています。SNSを“マス”だと言ったのは、そこに流すものが10万人に刺さる情報であれば、10万票を獲得することは案外可能なのではないかと考えるからです
小川:同感です。いま、ネット選挙を語る政党や候補者の視点は、プラットフォームの構造的な部分にいきがちです。例えば、フェイスブックのユーザーは何人? とか、どんなことができるかとか……。でも、本当はそこで流布するコンテンツが何より大事です。ハイチュウをどう売るか? を考えてきた、もしくは「東京プリン」というアーティスト像の見せ方を考えてきた伊藤さんが、政治家「伊藤ようすけ」をどのように見せるべきかを考える。
まだ始まったばかりですので、今はまだトライアルのような状態ですが、実践で一つひとつ体感しながら、やがてそのことに気づいていくのだと思います。
伊藤:ネットもマスメディアでも、コミュニケーションの根本的な考え方は同じ。どんな強力なメディアを使っていても、コンテンツを間違えると波及効果はないのです。
だからこそ、企業のマーケティング活動では、市場がどのようなものを求めているかを調査するわけです。チョコレート菓子のダースなら「口どけ」を言うべきなのか、「甘さ」を言うべきなのか。その時代の市場の空気を読み取り、何を言うべきか、という作戦を固める。その作戦さえ間違っていなければうまくいきます。
ですから、伊藤ようすけは、「わたくしは…‥」と話した方がいいのか、「僕は……」と話した方がいいのか。自分としてのキャラクターをどのように出すことが市場にマッチするのか、その見極めが重要になります。今、「伊藤ようすけ」でネット検索すると、すぐにプリンを被った僕の写真が出てきます。普通、「こんなやつに政治を任せられるか?」と思いますよね(笑)。悩みは尽きません……。
(後編に続く)
※後編は6/21(金)に更新予定です。