国民の方がネットを使いこなしている
小川:タレント議員、かつ広告の実務経験者の議員はこれまでいませんよね。広告に携わる人たちは注目していると思います。政治の世界に踏み出してみて、どのように感じていますか。商品を売るのと、自分という商品を広報するのとでは大分違うのでしょうか。
伊藤:政治については興味があるんだなということは分かりました。ただし、なぜか皆さんネガティブです。「政治家なんかになって、一体何をしたいんだ?」と聞かれることがほとんどです。ネガティブでシビアな視点から興味関心がスタートしている印象を受けます。ファンから“愛されて待たれている”ハイチュウなど新商品とはかなり違います(笑)。
小川:政治に対する不信感は、なぜそれほど根強いのでしょうか。
伊藤:僕自身のファンからも、「そんな人だと思わなかった」というメッセージをもらってショックを受けました。政治家は、自分たちの生活をよくしてくれるかもしれないのに。タレント議員のイメージが強いのかもしれませんし、「本当はお金をたくさんもらってやっているんでしょ?」と誤解を受けている部分もありそうです。
でも、本当にお金はもらっていません。でも、出馬表明直後に「参謀になりましょうか?」と声をかけてくる選挙コンサルタントたちの金額提示に驚きました。億の大台にのっているんです。考えてみれば、100万人に郵送費60円でDMを送ると、それだけで6000万円です。従来の戦術で活動するとしたら、そのくらいの資金は必要ということですよね。
小川:なるほど。それをネットで代用する方法はあり得ますよね。
伊藤:DMもそうですが、ネットリテラシーという面では、政治の世界はかなり遅れています。この間、総務省がネット選挙のガイドラインを説明するというので行ってみたところ、紙袋1つ分くらいの紙の資料を渡されました。これって、紙の無駄ですよね。PDFファイルで配信したらいいのにと思いました。選挙手続きのための各種届出書類も「ファックスで送ってください」というものが多い。うちの選挙事務所にはファックスなんてないですよと伝えたくて、わざとコンビニから送ってみましたよ(笑)。
小川:国民からすれば、ネットで情報を受け取ることは「今さら」なのかもしれません。政治家や候補者よりも、国民の方がよっぽどネットリテラシーが高い。
ネット選挙解禁後、政治家や候補者がネットを使えるかという議論ばかりされていますが、国民がネットを通じて政治に関心を寄せ、実際に投票へ行かなければ、「ネット選挙をやっても意味がない」と政治家が思い込んでしまう危険性があります。
伊藤:その通りだと思います。ネット上でいつでも有権者に監視されている、という危機感を抱かせることができなければ、かえって国民は“なめられて”しまいますよね。
ネットに書けば、ちゃんとチェックされるんだ、情報は伝わるんだと実感してもらうチャンス。逆に、ネット選挙の真価が問われるのは、国民が本気で取り組むかどうか、という部分かもしれません。
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