少し前のクルマのCMといえば走りと性能の訴えが中心だった。それが、クルマではなく、乗り手である人を描くように変化し始めている。
間違いなく中国は、今、変革期に来ている。商品を訴えれば売れた時代は過ぎ、スペック競争も限度まできた。これからは落ち着いて、人を描いていこうじゃあないか? そうすれば「中国人とは何か?」を考えざるを得なくなり、結果として独自の表現にいける。
世界や日本がたとった道を、フルスピードで中国の表現が追いついてきている。
ここ3年のカンヌの受賞を見ても、グランプリ4件、ゴールド12件、シルバー11件、ブロンズ21件となっている(電通CR情報開発部調べ)。
5時間半のセミナーは、ずっと熱気に満ちていたわけではない。13億人の中国という市場、仲間意識が強い中国人の性向、価値観が違う若者、急激なデジタル化が進む影響……などの内容が重複して語られ、最後はまばらな観客しか残っていなかった。中国から駆け付けた幹部たちも忸怩たる思いをしたことだろう。残念ながらこの会場で感じる限りは、「中国の咆哮」が十分に届いたとは言い難い。
しかし……。
実はパリからカンヌへ入るフライトの待合室で、中国広告協会会長の李国慶氏と秘書長の燕軍氏に会った。協会のナンバー1とナンバー2である。「China Day」を目前に控えていささか興奮気味であった。
「カンヌは今年60周年。中国では60年経つと、新しい局面に生まれ変わると言われています」「来年はIAA(国際広告協会)の大会を、初めて中国で開催します」などと熱く語ってくれた。
今年のアドフェストでは、Steering CommitteeのChairmanを燕軍氏が務めた。そしてカンヌで「China Day」。パーティも4つ開催する。来年は北京でIAA。
「世界の工場」から、「Soft Power」へと転換を遂げたい中国にとって、広告、コミュニケーション、クリエーティブは国家戦略の先兵となる。
国家としての「咆哮」は、すでに始まっている。
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