電通・伊藤氏「クリエイティブは、ジャーナリズムである」――JAAAクリエイティブ研究会レポート(前編)

(左から)読広・中村氏、電通・伊藤氏、博報堂・福部氏、ADK・中島氏

日本広告業協会(JAAA)は21日、「JAAAクリエイティブ研究会」を都内で開催した。
2012年に活躍したクリエイターを称える「クリエイター・オブ・ザ・イヤー賞」入賞者が講演するもので、7月以降は全国を巡回、名古屋(7月11日)、札幌(9月27日)、三島(10月10日)で開催する(登壇者は会場により変動あり)。

【登壇者】

  • クリエイター・オブ・ザ・イヤー賞(最高賞)
    電通 伊藤公一氏(アカウント・マネジメント局ECD)
  • 審査委員特別賞
    博報堂 福部明浩氏(シニアクリエイティブディレクター)
  • メダリスト
    読売広告社 中村信介氏(クリエイティブ局クリエイティブディレクター)
  • メダリスト
    アサツー ディ・ケイ 中島和哉氏(ADK CREATIVE DELUXE クリエイティブディレクター/プランナー)

魅力的な「ホンダ」の人格をつくるため3人のCDに依頼

ホンダ「負けるもんか」をはじめとする企業広告の仕事で「クリエイター・オブ・ザ・イヤー賞」の最高賞を受賞した伊藤公一氏。ストラテジック・プランニングやメディア担当者らと一体となり、ホンダの広告コミュニケーション全般のみならず、展示会のディレクションや販売店への集客、金利商品開発などビジネス全般に関わっている。

伊藤氏による手書きの講演資料が映し出される。クライアントへのプレゼンも手書きのスタイルが定番だという。

「クライアント(ホンダ)の社内では“(この表現は)ホンダらしいのか?”という問いかけが常になされている」といい、伊藤氏が強く意識してきたのは「企業広告ではなく、“人格広告”を目指す」という考え方。

ホンダの場合、人格とはすなわち創業者の本田宗一郎自身の言葉に込められていると考え、氏の語録から「負けるもんか」「試す人になろう」「面白いから、やる」という伊藤氏はフレーズを選んだ。「人間と同じで、人格は多面的だからこそ魅力がある。それぞれの言葉をモチーフに、あえてそれぞれ異なる3人のCDの手により異なる“人格”の企業広告を制作した」。それが以下の三篇のCMだ。


「タレント広告やストーリー性の強い広告よりも、物事の本質を語る広告が得意。クリエイターは何かを創り出す人ではなくて、商品や企業の個性を探りながら分かりやすく伝える翻訳者でありたい」と伊藤氏は言う。これまで手掛けてきたサッポロビールや朝日新聞社、ベネッセコーポレーションの仕事なども交えながら、自らの哲学を「クリエイティブこそ、目の前にいる人の本質に迫るジャーナリズムである」とまとめ、締めくくった。

読広・中村氏「社会を映す広告、社会を変える広告を」

メダリスト受賞の読売広告社・中村信介氏も伊藤氏と同様に“ジャーナリスティックな視点を持った”、物事の本質に迫る広告づくりを志向しているという。

今回の受賞は東日本大震災発生後のサントリーやサントリーホールの広告が評価されたもので、中でも代表作として挙げられているのが、サントリーホールのラジオCM「ふるさと」編だ。

2011年3月の東日本大震災から1カ月後、テノール歌手のプラシド・ドミンゴ氏は周囲の反対を押し切って来日。サントリーホールの舞台に立ち、童謡「ふるさと」を日本語で歌いあげた。「ふるさと」編はその音源を活かし、制作された。

このほか、広島で被爆した木からつくった楽器「コカリナ」による演奏をモチーフとしたラジオCM(2008年、ACCジャーナリスト賞受賞)や、1989年に亡くなった指揮者・カラヤンとサントリーホールとの関わりを描いたラジオCM「P席のカラヤン」(2009年)なども紹介。中村氏のポリシーであるという「社会を映す広告、社会を変える広告」を体現してきた作品の数々を披露した。

(福部氏、中島氏の講演レポートは後編にて)

written by sendenkaigi

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