日本広告業協会(JAAA)は21日、「JAAAクリエイティブ研究会」を都内で開催した。
2012年に活躍したクリエイターを称える「クリエイター・オブ・ザ・イヤー賞」入賞者が講演するもので、7月以降は全国を巡回、名古屋(7月11日)、札幌(9月27日)、三島(10月10日)で開催する(登壇者は会場により変動あり)。
【登壇者】
- クリエイター・オブ・ザ・イヤー賞(最高賞)
電通 伊藤公一氏(アカウント・マネジメント局ECD) - 審査委員特別賞
博報堂 福部明浩氏(シニアクリエイティブディレクター) - メダリスト
読売広告社 中村信介氏(クリエイティブ局クリエイティブディレクター) - メダリスト
アサツー ディ・ケイ 中島和哉氏(ADK CREATIVE DELUXE クリエイティブディレクター/プランナー)
前編の記事はこちらから。
「ゼロカロリーブーム」への違和感から「とどけ、熱量。」が生まれた
審査委員特別賞を受賞した博報堂の福部明浩氏は、大塚製薬・カロリーメイト「とどけ、熱量。」、JRA「ガチ馬」(AKB48の成人メンバーがCM出演やCDデビューをかけてレースの予想に取り組む)、テイクアンドギヴ・ニーズ「年の差割」(カップルの年の差の分だけ、結婚式の費用を割り引くサービス)などが評価され受賞に至った。このほか最近では、日本テレビ・開局60周年「日テレ Go!Next60」などを手掛けている。
そんな福部氏がこだわってきたのが、コピーの基本である「What to say」「How to say」に加えて、「Where=どこでその言葉が、一番活躍すべきか」ということ。このような気づきを得たのは、味の素・クノール「つけパン、ひたパン」の仕事を手掛けたのがきっかけだったという。
JRAの「ガチ馬」(2012年4月~)ではAKB48を語る際にしばしば使われる「ガチ」というフレーズを用いることで、スポーツ新聞や情報番組で大きく取り上げられることに成功。そのパブリシティ効果は絶大であり、15年ぶりとなるJRAでの売上アップに貢献した。「秋元(康)さんの事務所での打ち合わせのたびに、何秒に1回かは“ガチ”という言葉が出てくる。ガチのものでなければ多くの人を振り向かせることはできない、と強調されていたのが印象的だったことから生まれた」と説明した。
また、大塚製薬「カロリーメイト」の「とどけ、熱量。」(2012年11月~)については、「カロリーメイト」という商品そのものがメディアになるという考えから着想した。加えて、福部氏はいち生活者の実感として、「世の中はゼロカロリーブームだけど、何か違和感がある。必ずしもカロリー=悪というわけではないのでは」という思いが福部氏の中にはあった。そこで「カロリーメイトは訳すと、“熱量の友”。熱量を持って、前向きに生きる人を応援する存在であるべきでは」と考え、このコピーが生まれた。
2013年春のCM楽曲は米米CLUBの「浪漫飛行」だが、キャンペーンが始まった2012年秋冬のCMでは、中島みゆきの「ファイト!」を使用。満島ひかりが力強く歌い上げるシーンが印象的だ。
「富士山の五合目くらいまでは誰でも行けるし頑張れる。でも、その先は体系化できない、簡単には越えられない壁がある。一歩一歩、地道に努力して登っていくしかないですよね。それは受験勉強も、コピーを書くときも同じ。本当に辛い境地に陥ると、背中を押してくれる曲とそうではない曲が感覚的にわかる。『ファイト!』は僕自身も明け方まで仕事をしながらよく聴いていて、頑張る人の心に絶対に響く、と自信を持てる曲だったんです」。
ADK・中島氏「普遍的な共感ポイント×ドラマ性にこだわる」
メダリストを受賞したアサツー ディ・ケイの中島和哉氏は、スクウェア・エニックス「ドラゴンクエストⅩ」のテレビCM(SMAPが新SMAPを募集する)、日清食品「日清麺職人」テレビCM(松岡修造と錦織圭が共演)、名古屋市の商業施設「サンシャインサカエ」のテレビCMが代表作として紹介された。
中島氏がCM企画におけるポイントとして特に重視しているのは「コアアイデアの開発」、つまりいかにドラマ性あるストーリーに仕上げるか。また、ゴールイメージとして「世の中にどんな読後感が残るキャンペーンにするか」という点。
中でも「サンシャインサカエ」のテレビCMは海外の広告祭でも入賞を果たしており、「名古屋エリアだけに留まらない評判づくり」にこだわってきた。これまでウィンターセールキャンペーンのCM「タクシー」編は2012年のアドフェストで金賞を受賞、国内の情報番組でも取り上げられたほか、YouTubeではウクライナで16万回(4日間)、ベトナムで42万回もの再生回数を記録した(現在は公開終了のため、下記の動画は最新の「ガムアーティスト」編より)。
このほか、ケツメイシ「LOVE LOVE SUMMER」のミュージックビデオの仕事も紹介。甲子園を舞台に現実ではありえないような破天荒な試合を繰り広げるという内容で、1か月で70万回再生された。結果、ヒットチャートで初登場1位を記録したほか、若年層の間で口コミで広がっていった。
中島氏の仕事はいずれも、人々の心の中にある「普遍的に共感を呼ぶポイント」を押さえたうえでドラマ性を掛け合わせているのが特徴である。「ブランドの本質的な価値を探りながら、情報を人格化する。その上で、予算や期間に合わせてコンテクストを構築すると、強いインパクトや拡散力が生まれていく」と自らのこだわりを語った。
電通・伊藤氏「クリエイティブは、ジャーナリズムである」――JAAAクリエイティブ研究会レポート(前編)の記事はこちらから。
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