ネットが選挙に与える影響とは?キーワードは「情報格差」と「自発的動員」

初めまして、慶應義塾大学の李洪千です。大学で数学を専攻したのに、なぜかジャーナリストとなり、今は大学で教鞭をとっています。来日して14年、その間2002年と2012年に大統領選挙にも関わり、昨年はネット選挙運動にも参加しました。活動参加の理由は、有権者が主人公になる選挙を作りたかったからです。有権者の声は「表現の自由」として保障すべきものです。本来、政治家を取り締まるべき法律で有権者の口をふさぐのはナンセンスだと思うのです。

最近では、日本のネット選挙解禁からメディアに出ることも多くなりました。老後の目標は、韓国で日本酒専門店を開くことです。

さて、参議院選挙まで残り1カ月です。日本でもようやくネット選挙運動が始まりますね。皆さんは、韓国やアメリカの選挙と同様に日本でもネットから何かサプライズが起こりうるのでないかと期待を寄せているのではないでしょうか。それは何か変わって欲しいという期待感の表れだと思います。韓国やアメリカで起きたようなサプライズが日本にも起こりうるのか、期待感が先行している中で、ネット選挙運動がもたらす損得に各政党は神経を尖らせています。

ただ、今の状況では、ネットが盛り上がる気配はありません。それは今回の解禁が、有権者が勝ち取ったものではなく、大上(政治)から与えられたものだからではないでしょうか。理由はともかく、選挙にネットが利用できるようになったのが大変な変化ですが、期待より心配が多いのが現状です。

それでは、どのような条件でネットは選挙に影響を与えるのでしょうか?

韓国の経験からみると、以下2つの条件が重なった時に大きな影響が産まれました。まずは、「情報格差(バイアス)」と呼ばれるデジタルデバイドが大きくなっている時です。インターネットの衝撃が大きかった2002年の大統領選挙、韓国のインターネット普及率は59.4%に過ぎませんでした。そして、利用者のほとんどは若者でした。インターネット利用率、スマートフォンの普及率、ツイッターやfacebookのようなSNSの利用率の世代別の開きが大きいほど、影響が出やすい傾向があります。

二つ目は、「自発的動員」です。2002年の反米デモ、2010年、2011年、2012年にネットで広まった投票呼びかけは、投票行為を政治的行動から楽しみの共有へと転換させ、投票場へ若者の足を運ばせました。さらに、2011年のソウル市長選挙では、多数の有名人が投票への呼びかけを行うなど積極的に選挙に参加しました。それに対し、今の日本ではネット選挙の影響を“見守ろうとする人”が多い気がします。しかし、それだけでは何も変わりません。

ネット選挙運動解禁は、一つの条件に過ぎません。変化を起こすには更なる要因が必要なのです。

本コラムでは、来る来月の参院選投票日に向けて繰り広げられる、各党のネット発信をレポートするとともに、ネット選挙のビジネスチャンスについても紹介していきたいと思います。

【「参院選2013 ネット選挙合戦緊急レポート」】
次回は7月1日(月)に更新します。(毎週月曜更新)

李 洪千(慶応義塾大学 総合政策部 専任講師)
李 洪千(慶応義塾大学 総合政策部 専任講師)

イ・ホンチョン 1968年韓国生まれ。

専門は政治コミュニケーション。中央大学非常勤講師などを経て2011年から現職。94年韓国記者協会編集局次長を勤め、02年には民主党大統領候補者演説・メディア担当秘書、ソウル市長選挙公報秘書として選挙に携わる。06年神奈川県松沢知事マニフェスト評価委員会特別委員。12年韓国大統領では文在寅候補陣営のネット選挙チームに加わった。

李 洪千(慶応義塾大学 総合政策部 専任講師)

イ・ホンチョン 1968年韓国生まれ。

専門は政治コミュニケーション。中央大学非常勤講師などを経て2011年から現職。94年韓国記者協会編集局次長を勤め、02年には民主党大統領候補者演説・メディア担当秘書、ソウル市長選挙公報秘書として選挙に携わる。06年神奈川県松沢知事マニフェスト評価委員会特別委員。12年韓国大統領では文在寅候補陣営のネット選挙チームに加わった。

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