新 岳志(コピーライター/高知新聞広告賞最優秀賞受賞。2005年基礎コース、文章力養成講座、2006年専門コース小西クラス、上級コース、2010年専門コース谷山・井村・吉岡・照井クラスを修了)
前回のコラムで、さらっとコピーライターになりました。今回は、会社に入ったばかりのころの話と、少しアドバイスみたいなことを書きます。新人篇のテーマソングは、andymoriの『Peace』です。
常に学園祭前夜みたいな状態。
配属されたのは、常に忙しいと有名なチームでした。でも、あんまり辛くはなかった。それどころか、楽しいと思うことのほうが多かった気がします。常に学園祭前夜みたいな状態。たとえ大変な仕事でも、それを強引に楽しむメンタリティっていうのは、広告の仕事をするうえで、かなり大切な要素かもしれません。
どう取り繕っても、ウソはバレるんだよ!
ぼくは、いままで、CDや先輩コピーライターの下についたことがありません。ぜんぶ自己流。自由と言えば自由だけど、時折、不安になることもあります。コピーライターになって3年目がすぎたころ、そんなモヤモヤを晴らしたくて、『専門コース』の谷山・井村・吉岡・照井クラスを受講しました。プロとして通う、初めての講座です。受講生のレベルは、過去に受講したどの講座よりも高かった。切磋琢磨と言えば聞こえはいいけど、実際はついていくのに必死でした。ぼくは、このクラスの卒業プレゼンで、特大のどんずべりをかましてます。直前までコピーをそろえるのに必死で、ほぼノープランのまま当日の朝を迎えてしまったぼくは、ほかの人のプレゼンを聞いて焦ったあげくの果てに、その場ででっちあげた屁みたいな理屈で、プレゼンをしてしまったのです。そのあと、谷山さんに言われたひと言は、一生忘れられない。
「どう取り繕っても、ウソはバレるんだよ!」
頭がくらくらしました。最後までプレゼン内容を固められなかった情けなさと、みんなの前で浅はかな人間性を露わにされてしまった恥ずかしさで。いまでも、思い出すたびに心臓がぎゅーっとなります。毎日流れるように仕事をしていると、その場しのぎの言葉でやり過ごしてしまいそうになることが多々ある。そんなときは、このときのことを思い出して、丁寧に考え直すようにしてます。ちなみに、過去にコラムを書いていた山川さんと竹田は、このクラスの同期です。
コピーライターにチャレンジする勇気。
出すぎたまねとは知りつつも、少しだけアドバイスを。異業種からコピーライターにチャレンジするときに、ぼくが思ったことです。広告以外の世界からコピーライターを目指すのは、転職できる確率や将来の安定性で考えると、かなり勇気が必要かもしれません。もしチャレンジを諦めたとしても、その言い訳に困ることはないでしょう。でもぼくは、それじゃあ、10年後、20年後の自分がかわいそうだと思った。将来の自分が、「チャレンジしない人生だったなあ」「人生ってこんなもんかあ」と思って生きてしまうのは、耐えられなかった。だから、チャレンジしました。勇気が出ない方は、一度、こんな風に考えてみるのはいかがでしょうか。
最後に、宣伝。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。迷えるどなたかの参考になれば嬉しいのですが。
最後に、宣伝させてください。ぼくのことじゃなく、講座で同期だった木下龍也のこと。講座の最中から非凡さを見せつけてくれていた彼が、歌人となり、歌集を出しました。
夕暮れのゼブラゾーンをビートルズみたいに歩くたったひとりで
ハンカチを落としましたよああこれは僕が鬼だということですか
自販機のひかりまみれのカゲロウが喉の渇きを癒せずにいる
鮭の死を米で包んでまたさらに海苔で包んだあれが食べたい
カードキー忘れて水を買いに出て僕は世界に閉じ込められる
興味ある方は、ネットでポチっとお願いします。ちなみに木下くんは、ウエンツに似てます。では、またどこかで。
新 岳志(あたらし たけし)
コピーライター。
東京農工大学工学部卒業。電車メーカーのメカエンジニア職を経て、現在は博報堂プロダクツ所属。プロモーショナル・マーケター資格所持。高知新聞広告賞最優秀賞受賞。
2005年基礎コース、文章力養成講座、2006年専門コース小西クラス、上級コース、2010年専門コース谷山・井村・吉岡・照井クラスを修了。
【「コピーライター養成講座卒業生が語る ある若手広告人の日常」バックナンバー】
- 「内向きは、無知につながっている」(9/24)
- 異業種からコピーライターに転職した話【フリーター篇】(6/24)
- 異業種からコピーライターに転職した話【会社員篇】(6/17)
- 異業種からコピーライターに転職した話【学生篇】(6/10)
- 2013年5月 古屋彰一「地方での広告づくり」
- 2013年4月 日野原良行「打席はそこらじゅうにある」
- 2013年3月 竹田芳幸「ありがとう。大石さんと石田さん(コピーライターになる編)」
- 2013年1月 平野慎也「25歳、新人コピーライターのリアル。」
- 2012年12月 室山加奈子「Webディレクター、コピーを学ぶ」
- 2012年11月 小野勇樹「いちデザイナーが感じる、言葉の大切さ。」
- 2012年10月 貝洲岳洋「(極私的)広告セレンディピティ(1)」
- 2012年9月 林潤一郎「よく考えない。」
- 2012年8月 小林麻衣子「女子力」より「おっさん力」
- 2012年7月 杉山元規「悩める29歳(1)」
- 2012年6月 栗栖周輔「学歴なし、職歴なしで広告業界に入るには」
『コピーライター養成講座』
講師は一流のコピーライターが直接指導 プロを育てる実践型カリキュラム
いまでも多くの有名クリエイターを輩出している本講座。幾度かの改変を経て、内容を一新。コピーやCMといった、広告クリエイティブだけでなく、インタラクティブ領域のコミュニケーション、マーケティングやメディアクリエイティブなど、さまざまな視点からコミュニケーションを構築する能力を養い、次世代のクリエイターを育てます。