候補者が抱く不安の大きさに比例し、関連ビジネスが拡大する
ネット選挙運動はお金がかからない選挙でしょうか。答えを先に言うとまず「ノー」です。
韓国では、インターネットを利用する選挙運動は「お金がかからない選挙」というイメージが強く、“SNSを利用した選挙運動を規制することは表現の自由を妨げる”という理由から、韓国の憲法裁判所が有権者のネット選挙運動を全面解禁した2011年12月にも「選挙運動の費用が画期的に低くなる」ということが、解禁の理由の一つとして取り上げられました。しかし、現実はこれと正反対のことだったのです。
SNS選挙運動が完全解禁された2012年の韓国の大統領選挙では、5年前より10%以上選挙費用が膨らみました。選挙に勝利した与党のセヌリ党は446億ウォンを、野党も450億ウォンの選挙費用を使いました。2007年と比べてもそれぞれ72億ウォン、50億ウォンが増えた金額です。が、その内容をみると、セヌリ党は選挙費用の58%、民主党においては70%ほどが、メディア関連費用でした。2012年4月の韓国の総選挙でも、候補者らは平均して選挙資金の10%ほどをソーシャルネットワーク関連費用として使いました。インターネット回線の開設、インターネット利用料、ホームページ制作・維持費などが表に出てくる費用ですが、計上できない支出もあることから、実際はそれ以上にお金がかかります。まさに、そこに大きなビジネスチャンスがあるのです。
ネット選挙運動が解禁されたことで、候補者は選挙期間中にも何かをやらないといけない状況になりました。自分は何もしなくても相手側の候補者は、ネット上で何かを仕掛けてくるでしょう。また、短い選挙期間中にネット上で何が起こるかを予測できないため、安心感を与えてくれる“装置”やシステムに財布を開けてしまうのです。候補者が抱く不安の大きさこそが、ネット選挙運動関連のビジネスを拡大する土壌になるのです。