参院選2013 ネット選挙の戦い方 ~「政治家は、みんなの声を国会に届ける“メディア”である」小倉淳編(2)

ネット選挙解禁の本質は、“伝える”ことより“聞く”ことと話す元日テレアナの小倉淳氏(左)。聞き手は小川和也氏(右)

参院選は来月4日に公示予定。いよいよ2週間にわたる選挙戦が始まる。元日本テレビアナウンサーで江戸川大学教授の小倉淳氏は、日本維新の会から初出馬する。その名刺には、「アナウンサーの仕事とは、人に何かを『伝える』ことと思われがちですが、実は何より大切なのは人の話を『聞く』ことだと、私は信じています」と書かれている。ネット選挙の可能性は、「伝えることよりも聞くことに本質がある」と話す小倉氏に、その戦い方を聞いた。

―広報会議編集部では、7月号の特集「ネット選挙のコミュニケーション」に合わせ、参院選に臨む候補者の戦略を紹介していきます。聞き手は、企業を中心にソーシャルメディアマーケティングを手がけるグランドデザイン&カンパニー 代表取締役社長 小川和也氏。

発信の場ではなく、聞く場が増える

小倉:ネット選挙は限定的な効果しか及ぼさないと考えている人が多い。でも、私に言わせれば駅前でビラを配る方がよっぽど限定的(笑)。ウェブは一方通行ではなくインタラクティブだということも伝えたいですね。

ネット選挙解禁は、“発信”の場が増えるという側面に注目が集まりがちですが、実際には意見を吸い上げる場が増えることだと思っています。いま計画中なのが、ネット上で選挙公約の一部を募集すること。毎日配信するネット番組で「皆さんが望む政策」を募集してランキング形式で1つずつ紹介し、例えば参院選投票日の前日の7月20日23:55に1位になった政策をお約束のひとつにしたいと考えています。

小川:それはいいですね。おっしゃる通り、みんなの声を「聞く」ことが、デジタルデモクラシーの体現においてとても重要です。

小倉: 津田大介さんの著書に、「政治家はメディアである」という一節があります。「その通り!」と膝を打ちましたよ。これまでの政治家は一方的に発信するだけでしたが、これからの政治家は、みんなの声を吸い上げて国会に伝える“メディアである”と。

小川:ネット選挙解禁によって、政治がそもそも抱えてきた諸課題が浮き彫りになる可能性があると思います。例えば、若者の政治への関心が薄いことがより顕在化し、そのために何かしらの「政治教育」が必要だという観点が生まれるかもしれない。また、ネット選挙解禁によって、政治家個々の情報発信力が増し、直接的に有権者とのつながりを深められる環境が整うと、いままで以上に政党政治の課題が目立つようになるかもしれない。

小倉:確かに、「維新の公認候補であること」と「小倉淳であること」のどちらが注目を集め、どちらが浸透力があるかについては葛藤があります。東京選挙区だと個人名を書いてもらわなければいけませんが、比例ならば党名を書いてもらえればいい。確かに、SNSが政党政治のあり方を変える可能性は高いかもしれませんね。

本来、ツイッターは手早く対話ができるものだと思いますが、有無を言わさず打ち込む“機関銃”な使い方をしている人もいますよね。

小川:ソーシャルメディアにおいては、一方通行的な発言はユーザーに好まれない傾向が強い。特に一番受け入れられないのは、ひとりよがり、自慢話の類いです。

ツイッターの使い方については様々な見方があるでしょうが、いずれにしても橋下さんは“政治家がメディアになった”象徴的な人ですね。

小倉:これからは、政治にも「個の力」が必要な時代だということでしょう。これまでの「数の理論」から「個の理論」へ。

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