小川:これは、つまり量から質への転換でもあります。今後、有権者は、テレビで“一瞬”見るのではなく、ネットで“アーカイブされたもの”を検証するように見るわけです。候補者は、そういう状況を理解して、腹を括って発言したことの責任を果たしていくことが必要です。有権者は、候補者の発言を吟味して投票し、選挙の後も活動を観察する。その環境をネットがつくりだす。その派生で、今後は選挙制度のあり方そのものも問われることになるかもしれません。
小倉:地域ごとに投票してもらうための小選挙区など今の選挙制度は、物理的な隔たりを解決するための設計がされています。ところが、ネットは時空を超えます。やろうと思えば、一つひとつの政策の良し悪しを常に有権者に問い、その声を集めることさえ可能です。10年もすれば、65歳以上の人もネットを使いこなせるようになるでしょうし、十分変わっていく可能性が高い。
小川:ネットと政治の可能性は大きいですね。米国や英国などでは“オープンガバメント”の取り組みが盛んです。政府のデータが公開され、ネットを通じて市民が行政に参加するような動きです。日本でも、ネット選挙解禁というものにとどまらず、もっとネットと政治の関係を深堀していけば、いろいろな可能性が開けると思います。でも、今のところはひとまず参院選でのネット活用に視点が集中している。
仮に今回の参院選でうまくネットを活用しきれなかったという結果に陥ったとしても、そこはトライ&エラー、ネット選挙が解禁になったこと自体はエポックメイキングだと思います。単に選挙運動にネットを使えるようになったということだけでなく、政治をもっと国民に近いものにしていくきっかけになると考えているからです。
【「参院選2013 ネット選挙の戦い方」】
- 「選挙不参加は、300万円の権利をドブに捨てること」小倉淳編(1)
- 「政治家は、みんなの声を国会に届ける“メディア”である」小倉淳編(2)
- 「“炎上さえも歓迎”と思っています」小倉淳編(3)