幅広い業種・業態の企業でデジタルマーケティングに取り組む責任者・担当者が登壇した講演はもちろん、そうした企業の取り組みをサポートするツールや技術を紹介する展示にも多くの人がつめかけ、会場全体が熱気に包まれました。ここでは編集部が特に注目した講演にスポットを当て、そのレポートをご紹介します。
登壇者:柳下 雄一(アシックス グローバルマーケティング統括部 デジタルマーケティングチーム)
マラソンランナーたちが抱える課題の多くは、「どうやってトレーニングをしたら良いかが分からない」ことだ。自分に合ったトレーニングが分からなければ、練習してもタイムがアップせず、ランニングの楽しさは減ってしまう。
そこで、アシックスが提供するサービスが、無料トレーニング支援アプリ「My ASICS」だ。ランナーが性別や年齢、目標タイムなどを入力すると、科学的統計からレース日までの最適なプログラムを組んでくれる。同社 デジタルマーケティングチーム 柳下雄一氏は、「アプリの提供を通して、アシックスを身近に感じてもらいたい。無料で良いサービスを提供していれば、自然と製品も良いと思ってもらえるようになり、他社製品と比べることなく、当社の製品を選んでくれる」と話す。
初年度は、目標として4万人のユーザー獲得を掲げた。プライマリーターゲットにはフルマラソンで4時間をきる中級ランナーを、セカンダリーには初マラソンへのチャレンジャーを設定した。こうしたターゲットにアプローチする場として、マラソン大会などのイベントを活用。また、ランニング系の専門メディアでのタイアップ広告を掲載した。さらに、販売の現場とも連携し、店頭での販売員のコンサルティング時のツールとしてアプリを活用した。
なかでも、同社が協賛する東京マラソンとの取り組みを強化。「東京マラソンナビゲーター by ASICS」という「My ASICS」と連動させたアプリをリリースした。このアプリは東京マラソンに特化したコースガイド、持ち物チェック、栄養・回復ガイド、ペースキーパーなどの機能を提供するもので、事前イベントの「2013東京マラソンEXPO」の会場で案内した結果、登録者数が13,500人にものぼり、「My ASICS」の登録者も600人増えた。柳下氏は「コアターゲットである東京マラソン出走者およびその関係者に、アシックスがサポートしている実感を持ってもらえたと思います」と手ごたえを話す。また、フォローアップとして、1カ月後に「My ASICS」への誘導メールを送った。
柳下氏は、「これからのマーケティングでは、生活者が興味の湧いたタイミングで必要な情報を提供することが大切。アプリをはじめデジタルツールはまさにお客さまのタイミングでコンタクトするのに最適」と話し、講演を結んだ。