ドラマヒットを地元に還元! 「あまちゃん」ロケ地の広報

NHK朝の連続テレビ小説「あまちゃん」は、東京で引きこもりがちに育ったヒロインが、初めて訪れた母の故郷で “海女”という職業に出会い、やがて“地元アイドル”として成長していくストーリーだ。

主演を務める能年玲奈の体当たりの演技や脇をかためる豪華俳優陣が演じる個性的なキャラクター、宮藤官九郎による軽快な脚本など、さまざまな要素が相まって大ヒット。6月10日までの最高視聴率は22.1%、ドラマで使われる方言「じぇじぇ!」は流行語となり、東北の小さな田舎町の世界に多くの視聴者が引き込まれている。

ドラマのヒットに伴い、メインロケ地の岩手県久慈市には観光特需が生まれている。ゴールデンウィーク中の市内主要観光施設・イベントへの訪問者数は前年比203.4%の11万4878人(市発表)に上った。

まちおこしのドラマがここまでヒットしたのはなぜか? この活況を最大限追い風にし、また一過性のブームに終わらせないためにロケ地ができることとは? 

広報会議8月号では、制作を統括したNHKの訓覇圭プロデューサー、奔走する地元キーマンに、その思いや取り組みについて聞きました。

逃してはいけないチャンスだと思った

「大河特需」と言われるように、長期間にわたって放送されるNHKの大河ドラマ、朝の連続テレビ小説の影響力は大きい。一方で、その効果を一過性のブームで終わらせないことがロケ地に求められる。

『あまちゃん』のメインロケ地として採用されるまで、ドラマや映画の誘致活動を一切行ってこなかった岩手県久慈市。フィルムコミッションなどの組織体を持たない久慈市は長期にわたるロケ支援をどのように実現したのか。取材から明らかになったのは、誘客のための対外発信だけではなく、地元住民をいかに巻き込むかを重視した活動だった。

「まさか、朝の連ドラだとは思いもしなかった」とロケ支援責任者である久慈市の元産業振興部長・下舘満吉氏は話す。当初は、震災後に増えたドキュメンタリーや単発ドラマだろうと考えていた。朝ドラだと分かったのは、放送前年の12年3月頃だ。誘致活動の実績もない久慈市。長期間のロケ、対応案件の多さに驚いたが、「役所は往々にして『対応できるか否か』で判断しがち。でも、二度とないチャンスに『できるか』ではなく『やるべき』」と腹を括った。

12年9月、ロケ地となる5市町村、岩手県、商工団体、三陸鉄道やJR、ホテル、商店街など観光産業に関わる32団体を集め、「あまちゃん支援推進協議会」を立ち上げた。「放送終了後も客足が途絶えないようにするためには、実際に来てくれた方に『本当に良かった』と感じてもらわなければ。そのためには、自治体のみならず関係団体、民間の観光関連企業など地元の協力が欠かせないと考えたからです」。市や県に掛け合い、補正予算を組んでもらった。

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