第1回目の今回は、企業ブランドのウェブプロモーションと我々Sumallyのようなウェブサービスの違いについて書きます。オウンドメディアも多様化していますし、最近は企業がキャンペーン的にアプリを展開するケースも増えています。しかし、従来のキャンペーンサイトと同じような意識で、こうしたサービスを立ち上げたときの妙なズレを日々感じていることもあり、このテーマを選びました。
SumallyのCTO(最高技術責任者)の北村慧太が言った印象的な言葉があります。
「ウェブにおいてプロモーションは花火、サービスは盆栽みたいなもんだ。」
中村勇吾氏率いるthaで、yugopの右腕として長らくウェブプロモーション・キャンペーンの第一線で活躍していた北村ですが「そろそろ花火ではなく盆栽をつくりたい」、そう言ってthaからSumallyに転職してきてくれました(現在は、ほぼ内製ですが、ローンチまでSumallyの開発はthaが受けてくれており、北村はthaの現場担当エンジニアでした)。
僕自身、Sumallyの開発をthaにお願いしようと思ったきっかけは、thaが制作したあるファストファッション企業のキャンペーン用サイトを見てのことでした。こういう雰囲気のサイトにしたいという気持ちがあってそうしたわけですが (ちなみにthaの中では珍しい?非常に静的なつくりのものでした)、そもそもぱっと見は似ている部分が多分にあります。
しかしSumallyのローンチから1年半超が過ぎた今、ベースのコンセプトがローンチ段階にどれだけ練られている必要があるかといった点は双方に共通した重要なポイントだとも感じつつ、その運用方法に関しては大きな違いを感じています。
ここで言う違いは2つあって、ひとつはその運用する期間、もうひとつはその華やかさです。多くの場合、キャンペーン的なウェブプロモーションの目的は興味を持っていないユーザーを振り向かせるところにあり、基本的に1回目に見てもらう時のインパクトが重要視されています。いかにキャッチィなものを作るか、そして限られた期間においてどれだけ多くの人の目に触れるか、この触れ方の部分にクリエイティブの叡智と決して少なくはないコストが投入され、大きい軸はそこになります。
その期間内は「プロモーションのプロモーション」が費用をかけて行われることも多いでしょう。まさに花火、ですね。ものにもよりますが、数字の部分で見ればメインのKPI(Key Performance Indicator / 目標とする数値)はPVであることが多く、何人が体験したかなどの評価で数的な成功可否は判断されていることが多いように思います。流入元のランキングのチェックなどは行いつつも、コンバージョンを比較して出稿先を変えたり…といった「アトリビューション分析」などの細かい対応まではできていないケースがほとんどです。
それがウェブサービスの場合は(特に長期的に見た際に)重要なのが、どれだけそのサイトを使い続けてもらえるか、という視点に変わります。あくまで資産として設計されており、そこにユーザーを蓄積していくために、俗に言うABテスト、例えば「会員になる」のボタンは青がいいのか緑がいいのか、はたまたオレンジがいいのか…、細かいレベルにおいても1%の改善を求めて、仮説検証を繰り返すと毎日です。
ちなみに1.01の100乗というのは約2.7倍、365乗というのは約37.8倍、ウェブサービスの場合は、インパクトやデザインの勝負というより、この1%の改善をどれくらいのスピードでやっていけるかというデータドリブンの上に、あくまでフックとしてインパクトやデザイン、というものが乗ってきます(実は結局のところ、このフックが差別化要因になったりはするのですが、その話はまた別の機会に)。