取材が来る店(3)―「気=金=ホスピタリティ」

「陰気」「気が抜けた」「気にしない」「気が付かない」……といった「気」というエナジーを提供できないお店に対して、ほとんどの人はネガティブな反応を示し、できるだけ関わりたくないという心理が働いて足が遠のいてしまいます。

逆に「陽気」「気が入った」「気にかけてくれる」「気が付く」……といった活気溢れたお店に対しては、人は自ら積極的に接触したがります。

仮に安い素材を使ったとしても、そこに創意工夫や気配りがあれば、お客さんは気付いてくれて感動もしてくれます。
お客さんはお店に「気」を貰いに来るのです。

接客、料理、内装からメニューやショップカードに書かれた文章やデザイン、そしてトイレに備え付けられている備品や掃除の状態まで、「ここまで気を使っているのか」と思い、その良い気によって気分が高揚したり、幸福感を感じ取ることができるからこそ、その対価としてお金が支払われるのです。

「お金は寂しがり屋だから、仲間の所に集まる」といいます。

これは「金持ちの所にしかお金は集まらない」というたとえ話ですが、同様に「気を使っているお店には、それを求めているお客さんが集まる」というように考えることもできます。結果、お金も集まるわけです。

お金という対価を支払う代わりに、「気」というエナジー(活気)をお店から受け取るからこそ、商売という図式が生まれます。利益に繋がるのです。

「金使わないんだから、気ぐらい使えよ」という言葉からも窺い知れますが、「逆さに振っ
ても鼻血も出ないなら、お金の代わりに気であがなって」というように、気はお金に換えることができるし、逆に言えば「気=お金」なのです。

集客が上手くいかないお店は、広報のせいにする前に、魅力ある店になるために、まずこのことを見つめ直す必要があるでしょう。

もちろん、すべての人が「素晴らしい!」と褒め称える〝絶対″というお店はありません。
男女の好みも同様で、100人いれば100人好みは違います。

本書を読んで「うちの考え方は別」という方もいらっしゃるでしょう。

しかし、長年やって来て迷っている方、何を残して、何を棄てるべきか、という状況下にいる場合、本書が少しでもその判断の材料になれればよいと考えています。


吉野信吾(よしの・しんご)
1958年生まれ。黄金期の雑誌『POPEYE』の編集者を経て、商業施設や飲食店舗の設計プロデュースを数多く手がける。投資計画から設計、メニュー開発、運営、経営までの一貫した業務経験が豊富。多彩なマスコミ・ネットワークを駆使したプロモーションと、数多くの出版プロデュースも手がける。ラテンアメリカ・スタイルの内装設計プロデュースの先駆者。日経BP『流行る店』、マガジンハウス『もったいない』など著書多数。

【「取材が来る店」バックナンバー】

written by kouhoukaigi
いままで誰も書かなかった「取材が来る店」
飲食事業においては「雑誌に載る」といったメディア露出があるかどうかが、勝敗を左右する。メディア、店舗設計・プロデュース、店舗経営の三つの実務に精通する著者が、メディアとの上手な付き合い方や、メディアの目を通して見た魅力的な店のあり方、店を流行らせるための広報術を伝授する。

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