政治参加の“垣根”は、有権者が自由に発言できる場作りで解消される
最後に、「52.61%」(朝日新聞集計)。参院選の投票率です。2010年の参院選の投票率(57.92%)と比較すると5.31%減少した数値です。リビジェンが10代~30代の一般男女500人を対象に行った“ネット選挙”に関する意識調査結果によると、ネット選挙運動が解禁されたとしても、政治的なことは友人とシェアしない(49%)人が多く、ネットで政党や候補者のコメントについて「いいね」や「RT」をしたことがない人は87.1%に昇りました。選挙期間中に2800万件の選挙関連のツイートがあったそうですが、候補者や政党のツイートを除けば有権者のツイートは一部の人に集中しており、若者の間に広く浸透されていないようです。
これらをみると、政治的表現の手段としてネットを利用するというやり方を若者は本当に知らないのではないか、という疑いを抱えることになります。もちろん、若い世代の投票率向上を促すキャンペーン「I WILL VOTE~未来を選べ~」や、若者を中心に始まった「One Voice Campaign」のように、若者の政治参加を促す取り組みがなかったということではありませんが、結果にはつながっていません。横浜では「センキョ割」で投票を呼びかけましたが、大きなうねりになることはできませんでした。当日、何回も近所の投票所に足を運んでみましたが、若者の姿は少なく、列ができることもありませんでした。
さらに言うと、前述の大手ネット企業も敗北者に入るでしょう。日本を代表するネット大手7社が足並みを揃えて臨んだのにも関わらず結果を出せなかったのは、ネット企業の存在そのものが問われることにもなりかねません。これは、ネット企業が有権者を「主体」ではなく「対象」として捉えていたことが原因でしょう。しかし政治家だけしか盛り上がらないと、ビジネスチャンスは激減することになります。なぜなら、候補者の432人だけがビジネスの対象になってしまうからです。ネット上でいろんな発信やアクションを勝手に行うことで、新しいビジネスチャンスが生まれます。センキョ割がよい事例ですが、アイデアはまだまだ足りません。
インフラが整ってさえいれば、ネット選挙が盛り上がるわけではないということを今回の選挙は人々に知らしめたと思います。自分の主張をいかに表現するかということより、いかに問題を起こさないようにするか、問題がどう起こるかわからないから控えようとしていては、ネットを有効活用することはできません。今回の参院選は、「有権者不在」のネット選挙運動だと評価されるでしょう。
次回以降につなげるネット選挙で、有権者を取り込むためのポイントは「お祭り」です。なぜなら、有権者が自由に遊びを作り、楽しみを味わい、共有し、他人を誘える選挙こそが、垣根の低い政治参加を生み出すからです。今回の教訓を胸に、有権者がきちんと存在感を示せるネット選挙運動に期待したいものです。