いきなりですが、クイズです。
【問】多くのネットショップが半額商品を売り出す「楽天スーパーSALE」の期間中に、あるお店が値引きなしで高額日本酒(720ml、6,300円送料別)を100本販売したところ、7時間で完売しました。さて、その要因となったプロモーションツールは次のうちどれでしょうか?
(1)長いメルマガ
(2)楽天市場のVIP会員向け広告
(3)診断系スマホアプリ
(考えタイム)
ちっ
ちっ
ちっ
ぼーん!
正解は、(1)「長いメルマガ」です!
これは、楽天市場に出店している岩手の酒蔵「あさびらき十一代目 源三屋」というお店の事例です。取り扱った日本酒は、「大吟醸 袋吊り斗瓶囲い雫酒(ふくろづりとびんがこいしずくざけ)」という、ほとんど知られていない銘柄でした。
まず、前提の共有として、日本酒720mlの価格の相場をみてみましょう。
同店で、同じ大吟醸である「南部流伝承造り」は、1,575円。
ほかの蔵元のメジャーなお酒で「八海山(大吟醸)」という銘柄がありますが、それだと4,000円台。
「雫酒」の6,300円が、安い商品ではないのがわかります。
しかも、このプロモーションの背景となっていたのは、2013年3月の「楽天スーパーSALE」。このセールは、各店舗が売り出す数多くの半額商品が目玉になっているものです。「あさびらき」でもセールに合わせ、安くてお買い得な目玉商品を用意し、楽天市場の日本酒ランキング1位になるなど、積極的に取り組んでいました。
しかし。
店長の佐々木伸一(ささきしんいち)さんは、「安いから、またはお得だから売れる状態」に、ふと「自分は何のためにこの仕事やってるんだっけ?」と疑問に感じ、急につまらなくなります。
「売れるものを売るのではなくて、本当に自分が売りたいもの、やりたいことを伝えて売ろう」
そう考えて、お酒を造っている杜氏(とうじ)に交渉し、ゲットしてきたのがこの「雫酒」でした。
佐々木さんが書くメルマガは、いつも長く、1万字を超えるのが通常です。内容としては、自分やスタッフのまわりで起こったちょっと面白いこと、そして商品がいくつか紹介される、まさに「メールマガジン」の名のとおり雑誌的なイメージです。
その点、今回の「雫酒」のメルマガは、いつものメルマガとは違っていました。
紹介する商品は1つだけ。その1つの商品を語るだけなのに、7000文字を超えるボリューム。ふだんの商品紹介は1商品で数百文字なので、10倍以上の長さといえます。佐々木さん自身、「自分で書いていて涙が出るくらい本気で書いた」という渾身の作でした。
配信のしかたもいつもと変えました。読者全員に送る前に、まず上得意客である「10回以上購入者」に絞り込んで配信。「数も少ないので、ウチの提供する価値に共感してくれている人へ優先的にお知らせしたいから」(佐々木店長)という意図によるセグメント配信です。
そして、このメルマガを開封した人のうち、なんと44.6%ものお客さんが「雫酒」を購入したのです。ふだんメルマガを有効に活用している佐々木さんですら、「すさまじい反応があった」と驚く結果です。
さらに、メルマガのアーカイブを「店長ブログ」にアップし、佐々木さんがソーシャルメディアで「自分で書いていて涙が出た」とつぶやくと、そのリンクがシェアされて広まっていき、100本が7時間足らずで完売。翌日もう100本を追加するも、12時間ほどで完売となりました。
そのメルマガがこちらです。長いですので、コーヒーでも飲みながら、じっくりお読みいただくのがよいかと。
http://shop.plaza.rakuten.co.jp/asabiraki/diary/detail/201303040000/
この事例を通して、私が大切だと思うのは次の3つです。
あのお店はなぜ消耗戦を抜け出せたのか
本コラムが、大幅加筆修正で書籍化決定!EC業界だけでなく、消耗戦を抜け出すための具体的な方法と、そうしたことを実践している12の事例を紹介します。
※詳細はこちら