問われるのはブランドをコミュニティに委ねる覚悟
直営店の機能はあくまでブランドの世界観にピントのあったメッセージを届けること、そこにはその世界観が好きな人が訪れます。対して街に期待される機能は、自分が知らない、しかし自分が好きな世界観を徹底的にフラットかつ客観性を持って届けてくれることなのです。ユーザーを巻き込んでストーリーを作っていくにはこの両立が不可欠ですが、同時にブランドを、コミュニティに委ねる勇気と決断が必要になります。
前回も取り上げたホンダが提供している動画加工アプリ「ROAD MOVIES」は、クルマに関係のないトピックはもちろん、ユーザーの撮影した動画にホンダ車以外のクルマが登場する可能性ももちろんあるわけです。その覚悟をもってサービスを提供しはじめてユーザーから評価されているのです。とはいえ、だからといってホンダのブランド力向上にどの程度の効果があるかは未知数(やらないよりはやったほうがいいけれども)ですし、Instagramの動画サービスやTwitterの「Vine」と対抗していくのは並大抵のことではないという状況です。
先日発表されたスタートトゥディによる「STORES.JP(誰でも簡単にオンラインストアを作れるサービス)」を運営するブラケット買収は、ZOZOにコミットしているブランド以外の店舗の商品情報もユーザーに提供する目的で、提供できるコンテンツの幅のタガを外すという意味ではユーザーのための戦略であり、ソーシャル的に興味深いトピックでした。ZOZOの店舗とアイテムに限ってソーシャルな機能をつけても、ユーザーは面白味を感じないのは当然のこと。メディアとしてそれを行っていくには、ZOZOで扱えるブランドかという基準ではない、あくまでユーザーが興味のあるものはすべて対象とするようなブルドーザー的客観性が必要になり、その受け皿のとしての役割を果たしていくことになるのでしょう。
繰り返しになりますが、つまるところウェブ上で何らかのメディアを展開する場合、ユーザーに対し自主的なリピート訪問を求めるのであれば、街をつくるくらいの気概がないとユーザーオリエンテッドという概念には到底追いつかないのです。直営店を作るくらいの覚悟であれば、下手な内製ソーシャルにこだわるよりも、キャンペーン的なものやFacebookやTwitter、場合によってはInstagramやTumblr、そしてSumallyのようなソーシャルサービスとの連動にとどめておきましょう。街をつくるというのは、むしろ我々プラットホーマーの使命であり、領域なのです。
この話、自社でブランドマガジンを刊行するか、もしくは雑誌タイアップを行うか、という雑誌業界の世界の話にもけっこう似ています。次回はそんな話も交えつつ、起業家と編集者の違い(と共通点)について書いてみたいと思います。ではまた2週間後に!