広告とコンテンツを一体化する
そして、このような状況でコンテンツを生み出していくには、コンテンツと広告を一体化するのが一つの方法ではないか、ということで、これまでの連載でその方法を紹介してきました。それは言いかえればテレビ番組とCMの関係を、ネットに合った形に作りなおすことで、製作費をかけたコンテンツを大量に作ろうという試みです。
ただ、コンテンツを作るのは非常に手間がかかるため、現時点では、コンテンツ生産量を上げるため、今回の冒頭で紹介したような、ローコストでどれだけ良いモノを作れるかを試している段階です。コンテンツの生産ラインをどのように作るのかを考えています。
外部クリエイターとの連携
さらに問題なのは、自動車などの工業製品と異なり、コンテンツを作る作業は属人性が高く、社内でこなせる人の数は限られます。そのため、受注できる仕事量に限界があり、大きなビジネスに発展できない可能性があります。ただそれは、社内にリソースを限った時の話で、外部のクリエイターと連携すればいいのです。
プロデュースと監修を社内で行い、制作作業を社外のクリエイターと連携すればスケールできます。ここで求められるクリエイターは、ネットでウケる作法を知っていて、さらに広告とコンテンツを一体化できる人です。その良し悪しは脇に置いておいて、テレビ番組もテレビ局というメディアと制作会社というクリエイターが連携して作っています。ネットメディアでもできないはずはありません。
クライアントから見た、大量生産の意味
前述のヘンリー・フォードの『藁のハンドル』では、もう一つ、重要なエピソードが登場します。フォードが作った車は人気が爆発し、注文が殺到します。人気、つまりは需要に応じて価格を上げるのが通常のマーケティング手法です。ところがフォードはなんと、逆に車の価格を下げたのです。大量生産しているので、生産ロットが増えるほど、価格を安くできるという事情もありますが、なによりもフォードには「誰もが車を買えるような社会にしたい」という強い思いがあったのです。
同じように、ネットでもコンテンツの生産量を今よりも上げられるのであれば、一つのコンテンツの価格は下げられるはずで、より多くの、様々な企業が、コンテンツマーケティングに参加できるようになります。
テレビに出稿できる広告クライアントは限定されますが、もし価格が下がれば、中小企業でもコンテンツを生み出せる世の中になるかもしれません。それはとても楽しい世の中ではないかと、私は改めて強く思います。
連載の最終回について
これまでは個別の記事や方法論を紹介していたのですが、今回は、そもそものベースとなる考えや目的をご紹介しました。そして、次回が全6回コラムの最終回となります。最終回では、現在チャレンジしていることをご紹介します。その中の一つとして、担当しているLINEの企業タイアップ企画で、今後実現したい「LINEスタンプを使って物語を作る」という企画もご紹介します。