客観? 主観? 編集という力

目指すは、人間グーグル!

世の中の情報と客観的に対峙すること、このパートは僕はけっこう得意です。小学生のときから新聞が大好きで、父親と取り合いをしながら読んでいたり、もう少し大きくなると雑誌にもハマりだして、高校生のときには、男性ファッション誌、女性ファッション誌、カルチャー誌、情報誌、コミックなど数多くの雑誌にまんべんなく目を通すようになっていました。昼休みに図書館で、今はなき「アサヒグラフ」なんぞを読んでいたのはいい思い出です。最初は自分の興味のあるジャンルの情報にアクセスしたいという思いが強かったのですが、いつの間にか世の中全般で何が起こっているのかを知りたいという欲求のほうが強くなっていき、大人になってからは上記に加えて、1万以上のRSSフィードを購読したり、「人間グーグルを目指す…」などとぶつぶつ言いながら、情報のインプットには狂人的なエネルギーを使っていました(同時にインプットした情報を体験する、というところにもこれまたお金と時間を遣っていましたが・・・)。

あわせて、世の中で何が起こっているかだけでなく、誰が何を考えているか・やっているかを知っておくのも非常に重要で、編集者時代は、雑誌のインタビュー記事から気になった記事のクレジットはもちろんのこと、はなまるマーケットから笑っていいとも!のテレホンショッキング、情熱大陸まで、旬な人のプライベートが垣間見れる要素のあるテレビ番組はすべて録画、チェック(ここらへんはさすがに今はできていません)していました。キャスティングをする上でも、その人が何を好きなのかを知っているのといないのとでは、大きな違いがあります。その人のやりたいと思っていることを、情熱を持ってお願いすれば、実現できる可能性は往々にして高まるのです。

冗談みたいな話ですが、美味しいものを食べながらお願いすれば、さらに確率があがりますね。「あいつの選ぶ店はいつも美味しい」という印象をもってもらうところまで到達できれば、話を聞いてもらえる機会を得る確率もグンとあがったりで、そんな建前のもと、僕は今も日々クソマジメにレストランの研究をしています(笑)。

僕は編集者時代から、ここまでのプロセスに8割以上のエネルギーをかけていましたが、スタートアップをやる上でもよく似ています。今、世の中に必要だろうというモノのアイデアを出して、そのアイデアをベストメンバーを集めて実現していく。スタートアップのファウンダーの仕事の8割はここです。Sumallyも「ベースのデザインを誰にお願いしようか・・・」と思った時に中村勇吾さんがいいだろうという視点にはじまり、ダメ元でお願いしにいって熱意を語り、請けてもらうことができたり。

先日もAdobe、AKQAというスターキャリアを持つインターフェイスデザイナーの最終面接に、はるばるNYまででかけてきました(彼女は先月からデザインディレクターとしてSumallyに入社してくれています)。Sumallyをやっていくにあたっても、こうすれば収益があがる、というアイデアがベースになっているのではなく、こういう仕組みがあれば面白いだろうという確信のもとに、各パートのベストキャスティングを積み重ねていくという側面で、編集者として取り組んでいる気持ちは少なからず持っています。真摯な面白いアイデアこそがいろいろなものを動かしていける、それが僕が編集者時代に一番学んだことであり、今も存分に体感しています。もちろんそれ以外にも考えないといけないことは編集者時代以上にたくさんあって、そちらはそちらでそれなりに楽しみながらチャレンジの日々を送っているのですが・・・。

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山本 憲資(Sumally Founder & CEO)
山本 憲資(Sumally Founder & CEO)

Sumally Founder & CEO

一橋大学卒業後、電通、コンデナスト・ジャパン「GQ JAPAN」の編集者を経て、2011年9月「Sumally」をローンチ。http://sumally.com

山本 憲資(Sumally Founder & CEO)

Sumally Founder & CEO

一橋大学卒業後、電通、コンデナスト・ジャパン「GQ JAPAN」の編集者を経て、2011年9月「Sumally」をローンチ。http://sumally.com

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