「家政婦のミタ」との共通点
現在の社会的背景を見てみよう、日本経済はいわゆる「アベノミクス効果」で自動車など輸出産業を中心に業績を伸ばしている会社も増えていることは読者の皆様の感じているのではなかろうか。半沢直樹の原作である池井戸潤氏の「俺たちバブル入行組」は2007年に発行された書籍で1990年前後のバブル世代に入行した世代が直面する苦悩を描いている。
(c)TBS
ご存知の通りバブル期の銀行は土地神話に支えられ多額の融資を行った結果、インフレを引き起こしいわゆる「バブル経済」を生みだした。しかし、銀行の融資がストップすることでバブル経済は終焉を迎えたのであるが、その時期に銀行が大量に採用を進めたという背景がある。しかもその後、世の中が不景気になり銀行自体が統廃合を繰り返した結果、行員の生き残り競争が激化するという事態に陥ったのである。
すなわち、「半沢直樹」は日本経済の復活を予感している世の中に対して、そのような社会がかつてもたらした効果や社会的なひずみを浮き彫りにしているのと考えられるのである。また半沢直樹の妻の「花」は才能を持ちながら家庭に入っており、女性の社会進出というこれまた現政権が力を入れている問題が含まれている。
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この様な社会的なインサイトを取り込んでヒットしたドラマは数多くあるだろうが、筆者は直近では「家政婦のミタ」だと考えている。同ドラマが始まった2011年の10月は日本全体が3.11から立ち直っている最中であった。その中で登場した「笑わない、人間性を封印した」家政婦はまさにその頃の日本人の心境を反映したものではなかっただろうか?
そして、笑わないと決めた三田さんはその頃の視聴者が少なくとも自分と同じとして見られる存在ではなかったか。そこが共感され、最終回に三田さんが「微笑む」ことがドラマのクライマックスになり、視聴者も笑いを取り戻していった。家政婦のミタも半沢直樹も過去の家族の不幸という暗い過去を引きずって生きているのである。
日本テレビで始まったドラマWomanも視聴率を伸ばしているが、こちらも女性の社会進出における様々な問題と家族の在り方にフォーカスしたものであると筆者は理解している。やはり社会的なインサイトをつかんだ共感性の高いものになっているのではなかろうか?
堺雅人の演技も秀逸で、端正な顔立ちや所作、剣道をやっていたなど武士につながる部分も大きくまさに現代の会社を渡り歩く武士であろう。次回のコラムではドラマの構成スタイルとキャスティングに関して考えてみたい。内容に関して一つだけヒントを与えると:半沢直樹のセリフ「XX返しだ!」は日本の伝統芸能の1シーンに似ているのではないだろうか? これでわかった方も次回の記事までとどめておいていただきたい。