朝火英樹(ソフトバンクモバイル マーケティング・コミュニケーション本部 Webコミュニケーション部 担当部長)
前回は初回ということで「広告効果測定」に関して概論的なことをお話ししました。反響が予想以上に大きく、今後取り上げていくテーマについてどうしていこうか考えましたが、その都度、個人的に興味のある用語を取り上げていくことにしました。取り上げるテーマに脈略がないかもしれませんが、ご容赦ください。
今回、第2回目の「デジタルマーケティング用語辞典」のテーマは、O2O(Online to Offline)やセキュリティ分野で注目されている「ジオフェンシング」についてお話したいと思います。
ジオフェンシング
「ジオフェンシング(Geofencing)」とは、地図上に仮想的なフェンスを設置する技術のことです。
「ジオフェンシング」はモバイル端末の急速な普及にあわせて期待が高まっています。設定した特定のフェンス(エリア)の中に特定のユーザー(端末)が出入りした時に、自動的に最適な情報やサービス(クーポン発行など)を告知することが可能になるため、モバイル端末のGPS機能を活用したプロモーションに使えると注目されています。新聞の折り込みチラシのように特定のエリアに特化して告知ができるのです。
タイミングよく適切な告知ができる「電子チラシ」のようなサービスをイメージしてもらえるとわかりやすいと思います。また、この技術を使えば設定したエリアの外に、子どもや貴重品が離れると自動的にアラームメールを送るなどセキュリティの面でも注目されています。
多くのGPS機能を活用したサービスは、スマートフォンの専用アプリケーションを起動して、利用者が自分で(「今ここにいますよ」と)位置情報を発信すると、適応する周辺の店舗の最新情報やクーポンを入手できます。そのため、利用者に届けたい告知・クーポンが最適なタイミングで気づいてもらいにくいという課題もありますが、利用者があらかじめ設定しておけば自動的に情報が配信されてくるというサービスもあります。
しかし、利用者の位置情報はきわめてデリケートなプライバシー情報であり、企業側の扱い方を間違えるとプライバシーを侵害する恐れや、特定のエリアに入ったユーザーに対する「監視」だと嫌悪感を持たれたりする可能性があります。
さらに、現状のGPS機能の精度がそれほど高くなく、エリアを数10cm~数m単位で細かく限定して活用できるかという議論もあるのが現状です。ただし、GPS機能の精度については性能の向上が計画されていて、位置情報の活用はGPS機能の利用が難しい屋内にも拡大される予定です。
2014年に本格的な運用が予定されている日本の準天頂衛星を用いた測位システムでは、屋内にGPS衛星と同じ位置特定用の電波を送信する送信機を設置するしくみ(IMES:Indoor Message Service)の実現が予定されているため、GPS機能の利用が困難な地下やビル内でも、正確な位置を特定してサービス提供ができるようになると期待されています。
以上のような課題がありますが、皆さんがモバイル端末(スマートフォンなど)を常に持ち歩く現在、「ジオフェンシング」を始めとした位置情報のサービスには大きな可能性があると考えています。企業が「ジオフェンシング」を始めとしたすぐれた技術を活用して「モバイル」ならではの新しいサービスを提供していくことが、今後のマーケティングの重要なテーマになっていくでしょう。