いきなりですが、クイズです。
【問】株式を上場している某ナショナルブランドメーカーは、Eコマースで初めての直販をするにあたり、「既存の流通との軋轢(あつれき)」というハードルを乗り越えました。さて、どのような方法を取ったのでしょうか?
(1)関係者を集めた、徹底的な話し合い
(2)会社名を伏せるため、別法人を設立
(3)個人商店のような、地道な店舗運営
(考えタイム)
ちっ
ちっ
ちっ
ぼーん!
正解は、(3)「個人商店のような、地道な店舗運営」です!
これは、楽天市場に2000年頃から出店している某メーカー直営ショップの事例です。
メーカーさんからのネットショップ出店の相談では、会社の規模にかかわらず、ほぼ確実に「既存の流通との軋轢を避けるにはどうしたらよいか」という点が話題に出ます。今でこそ大手企業のなかにも「時流なのでやむなし」と直販に踏み切るスタンスが増えてきましたが、2000年当時にはECのための別法人を設立するところが少なくありませんでした。
そんななか、某メーカー直営ショップはどうしたか。
グループ会社である販売会社の、しかも「イチ営業所」が楽天に出店をしました。正確にいうと、イチ営業所が自分の判断で「ウチもネットショップやってみよう」と始めてしまったのでした。
やはり最初は、「既存の流通との軋轢」により、社内の営業担当から「取引先に『おたく、なんでネットで直販してるの!』と言われる」と煙たがられます。ネットショップを立ち上げただけでそれですから、いわんや値引きなどもってのほかです。
「福袋」でファンを増やしつつ、「ロットの壁」を越える
そこで、このお店が活用した施策の一つが「福袋」です。
そもそも軋轢の原因を考えてみると、卸先は「ウチに卸している商品をメーカーが安売りするのはケシカラン」という理由が最も大きい。だったら、「それぞれの商品をいくらで販売しているのかがわからない福袋」にすれば、軋轢が起きにくくなります。
さらに、福袋の中に非売品などを入れておけば、なおさら「各商品の価格」はあいまいになるわけです。
「福袋」というと、年始に行なわれるもの、というふうに思っている人も多いですが、年始以外にやってはいけないという決まりはありません。そこで、店舗運営の柱の一つとして頻繁に「福袋」を企画して、メルマガでお知らせするというのを繰り返すことで、地道にお客さんを増やしていきました。
そして、あるとき、「買ってくれるお客さんがこのくらいいるなら、ネット限定の商品をつくってもロットの壁を越えられそうだな」という瞬間が訪れます。
そこから「ネット限定商品」を「柔軟性のある価格」で販売できるようになり、店舗運営のステージが一段階上がりました。それによって、オープンから数年後に「楽天市場ショップ・オブ・ザ・イヤー」を受賞するに至っています。
この事例を通して、私が大切だと思うのは次の3つです。
あのお店はなぜ消耗戦を抜け出せたのか
本コラムが、大幅加筆修正で書籍化決定!EC業界だけでなく、消耗戦を抜け出すための具体的な方法と、そうしたことを実践している12の事例を紹介します。
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