帝国データバンクは9月2日、創業100年以上の「長寿企業」(個人、各種法人含む)を集計し、業種別、規模別、創業時期別、都道府県別に分析した「長寿企業の実態調査(2013年)」を発表した。
集計のもとになっているのは、144万社の情報を収録した企業概要ファイル「COSMOS2」。2013年8月時点のデータを使用し、各企業の業歴については、創業月まで判明しない場合もあるため、一律で「2013年-創業年=業歴」とした。
本調査の結果、業歴が100年以上の「長寿企業」は、2万6,144社あることが明らかになった。このうち、2013年に新たに「長寿企業」の仲間入りを果たしたのは1,410社で、業種別に見ると、最も多かったのは「清酒製造」の707社で、2位は「貸事務所業」の613社となっている。これは、もともと本業とは別に、所有していた土地などの遊休資産を貸し出して営業外利益を稼ぎ出していたものが、時代の経過とともに本業になりかわっていったケースが多く、近年「長寿企業」に占める割合が増加傾向にある。
続いて、3位「酒小売」(596社)と続くほか、「呉服・服地小売」、「婦人・子供服小売」など消費財関連の小売業が目立つ。規模別に見ると、「従業員10人未満」が1万6,287社で62.3%、「年商10億円未満」が2万1,431社で82.0%と、比較的小規模な企業が多くなっている。
明治時代以降(1868年以降)の創業は2万3,384社で89.4%を占め、江戸開府前(1602年以前)の創業は141社だった。
「長寿企業の実態調査(2013年)」より
都道府県別では、「京都府」の3.96%が最高。以下、「山形県」(3.72%)、「島根県」(3.60%)、「新潟県」(3.58%)が続く。
韓国銀行が2008年5月に発表した「日本企業の長寿要因および示唆点」と題する報告書によると、世界で創業200年以上の企業は5,586社(合計41カ国)あり、このうち半分以上の3,146社が日本に集中しており、続いてドイツ837社、オランダ222社、フランス196社の順となっている。韓国には創業200年を超える企業はなく、創業100年以上の企業が斗山(1896年)と東洋薬品工業(1897年)の2社となっている。また、中国最古の企業は1538年創業の漬物店「六必居」、1663年創業のハサミメーカー「張小泉」、漢方薬局「陳李済」と「同仁堂」、飲料「王老吉」で、150年以上の歴史を持つ老舗企業が5社という報告があるが、中国は1949年に企業がすべて国有化されているため、網羅的な調査が難しいとされている。
世界最古の企業としては、578年に百済から渡った金剛重光(柳重光)が創業した金剛組があり、2位の甲州西山温泉慶雲館(705年創業)と3位の千年の湯古まん(717年創業)の長寿企業も日本の企業だ。
日本に歴史ある企業が多い理由としては、植民地化や長期にわたる内戦などで人や産業が壊滅的な状態にまで追い込まれることがなかったことがあげられる。日本国内でいえば、第二次世界大戦で甚大な戦禍を被った沖縄には長寿企業が少ないことからいっても、事業継続にとって戦争は最大のリスクである。
長寿企業には、事業や従業員を守るための家訓や商道徳がある。こうした日本の長寿企業文化を世界に伝えていくことは、効率を優先するあまり、自然環境や人々の幸福をも蔑ろにしてしまうグローバル資本主義の暴走を止めることにつながるのではないだろうか。
※「長寿企業の実態調査(2013年)」の内容に関する問い合わせ先は帝国データバンク産業調査部(TEL:03-5775-3073 E-mail:atsushi.hirano@meil.tdb.co.jp)
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