世界最大の独立系デジタルエージェンシー「プロフェーロ(Profero)」(本社・英ロンドン)は8月、日本市場強化のため、コミュニケーションエージェンシーのエイリアンアイ(東京・渋谷)と合併し新たなスタートを切った。合併新会社は「プロフェーロジャパン」(同)で、元エイリアンアイCEOのジェームス・ホロー氏が代表取締役に就いた。社員は約20人で、主なクライアントはキャノンデール、ルフトハンザ、キリン・ディアジオなど。
プロフェーロは現在世界10都市に拠点を持ち、従業員数は約700人。アジア市場を重視していることで知られ、創業者でグローバルCEOのウェイン・アーノルド氏は現在、本社のロンドンではなくシンガポールを拠点に活動している。このほど来日したアーノルドCEOに、今後の同社の戦略について聞いた。
ローカルに根差しグローバルを展望
――新デジタルエージェンシー設立の背景についてお聞かせください。
両社がそれぞれ異なる強みを持ち、良いマッチングができると感じたからです。エイリアンアイは日本市場に根差しクリエイティブとテクノロジーに強みを発揮していましたが、メディアについては十分な機能を備えていませんでした。一方プロフェーロは特にパフォーマンスメディアに強く、メディアのビジネス経験が豊富です。この両社が組めば1プラス1を3にも4にもすることができると期待しています。
プロフェーロは1998年にロンドンで設立されたデジタルエージェンシーです。当社には創業当初から変わらず持ち続けているビジョンがあります。
1つ目はすべてのコミュニケーションがいずれデジタル化されるだろうということ。2つ目はメディアとクリエイティブ、テクノロジーが一つにならなければならないということ。これは今回の合併の大きな理由です。そして3つ目は、グローバルに展開していくということです。
創業当初からアジアに将来性を感じていました。それは拠点展開にも表れています。ロンドンの次に開設したオフィスがシンガポール、そしてシドニー、香港、上海の順でした。ヨーロッパの会社は、アメリカへ展開していくのが普通です。そして多くの経営者はヨーロッパにいながら、「これからはアジアが大事だ」などと説くのです。これでは説得力はありません。私は普段シンガポールを拠点に活動し、変化のスピードを肌で体感しています。
――そのビジョンが国境を越えて浸透し、成功している秘訣は何ですか。
社員がグローバル視点を持っている、またはグローバルなものの見方に関心があるかどうかを重視しているからではないでしょうか。我々はそれを「globally curious(グローバリー・キュリアス)」と呼んでいますが、そうした人を集めれば、同様の人たちと仕事をしたいと自然と思うようになります。その考えはクライアントとも視点を共有しやすく、関係性がより強固になります。
前の話と相反するようですが、そのためにはローカルがしっかりしている必要があります。その地域にしっかり根ざしてからグローバルについて考えるという順番であるべきです。プロフェーロの各拠点のクライアントは、およそ30%はローカルクライアントです。
「マッドメン」(注)の時代は、ニューヨークの広告会社はアングロサクソン系白人で占められていましたが、今の米国ではヒスパニックの割合が増えています。プロフェーロのニューヨークオフィスはいま、ブラジルやベネズエラ、メキシコなどから様々な人材が集まり、言語も英語とスペイン語が入り混じっています。他国から移ってきた人が革新的なアイデアを生み出すことはよくあります。
(注)マッドメン=1960年代のニューヨークの広告業界を描いた米国のテレビドラマ。勤務中の社内での飲酒、喫煙シーンなど、当時の社会情勢や風俗を緻密に再現しているのが特徴。