社会のためになる消費(4)自然と人をつなぐ新しい消費のあり方


集熱効率が高く、電気によるくみ上げが不要な真空管式の太陽熱温水器

家の屋根には太陽熱温水器が設置されており、家庭のエネルギー消費の約3割を占める給湯をほぼまかなえるという。集熱効率が高く、電気によるくみ上げが不要な真空管式で、以前住んでいた家から使い続けて12年使っているので、10年以上前に投資は回収済とのことだ。ちなみにこのタイプは、性能以外の問題によるトラブルが原因で、国内での生産が途絶えてしまったので、いまは中国製のものしかないとのこと。

「エネルギー効率と費用対効果からいうと、太陽光パネルと太陽熱温水器は比べものにならないくらい太陽熱温水器のほうが有利です。両方設置するスペースがあるなら両方考えてもいいと思いますが、どちらかしかないならまず温水器をお薦めします。補助金を使っても3キロワットで100万円以上するうえ、雨が降れば発電できないパネルを設置するよりも断熱や薪ストーブ、高効率照明など、もっと安くできる省エネを優先したほうが効率的」と四井さん。四井邸にも1キロワット弱の太陽光パネルが設置されており、自身の経験からの言葉だけに説得力がある。

夏場は冷房不要の環境だが、冬の暖房は、薪ストーブだけで2階まで温められるとのことで、晴れていれば限りなくエネルギー自給に近い。

家の建物自体が国産材なのはもちろん、食器や椅子なども四井さんが端材をもらってきてつくる。脱穀作業などを行う小屋の端には堆肥用の土の山があって、収穫後の麦わらの一部なども無造作に置かれている。このなかには定期的に人間の排泄物も加えられていているが、微生物の働きとバランスが取れているので、嫌な臭いはまったくない。鶏や山羊の排泄物とともに、すべて土の栄養分として活かされ、化学肥料などを加える必要はない。

社会のためになる消費(5)自然と人をつなぐ新しい消費のあり方に続く。

よつい しんじ
四井 真治(よつい・しんじ)
信州大学大学院農学研究科修士課程修了後(緑化工学)、緑化会社に入社。退社後、有機農業のコンサルタントを目指し、南米の不耕起栽培を見学、その後長野県で農業を始める。有機肥料会社に勤務後、2001年に土壌管理コンサルタント、パーマカルチャーデザインを業務内容としたソイルデザインとして独立。その傍ら、アトリエDEF 循環の家技術顧問、NPO 法人 BeGood Cafe 講師、理事、 NPO 法人パーマカルチャーセンタージャパン講師等を務め、ハイチ共和国にてパーマカルチャー技術指導(2008)。長崎県五島市半泊集落パーマカルチャーによる限界集落再生などのプロジェクトに関わる。
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