「アジア最大の広告祭をPRで倍返し!?―SpikesAsia2013 Report」(第1回)

アジア最大の広告祭「Spikes Asia Festival of Creativity(スパイクスアジア)」。このクリエイティブの祭典をPRの観点から斬ると、どんなテーマが見えてくるのか。ブルーカレントの本田哲也氏による、全3回の現地レポート。

シンガポールに来ている。アジア最大の広告祭である「スパイクスアジア(Spikes Asia Festival of Creativity)」に参加するためだ。

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今年は9月15日から17日までの開催。アジア版カンヌともいわれるフェスティバルには、昨年およそ5000作品がアワードにエントリーされ、アジア各国から2000人が参加した。冒頭で「広告祭」と書いたが、カンヌがすでに「広告」の名を捨て「クリエイティビティ」の祭典に進化したのと同様、スパイクスもアジアにおける最新のクリエイティビティを共有し発信する場としてその規模を急速に拡大している。2日目のセッション参加を終えて、僕は宿泊先のマンダリンオリエンタルホテルに戻り、この原稿を書いている。

本レポートでは3回にわたって、この成長著しいクリエイティブの祭典を「PR」の観点からスポットを当ててみようと思う。

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初日に発表された各カテゴリーアワードのファイナリスト(最終選考候補)を眺め、また2日間で20以上行われたセミナーに参加して思うのは、実績をあげ評価が高いキャンペーンには、(主体者が意識しているかどうかに関わらず)PR的なエッセンスがその中心に鎮座しているということだ。

それは当然ながら、「メディアで大きく取り上げられた」とかいうハナシではない。コアアイデア創出の起点と設計に、PR視点があるということだ。ではPR視点でのキャンペーン設計とはどういうことか。これを今回は2つのキーワード――「ファクト」と「パーパス」――で整理してみたい。

まず「ファクト(事実)」。成功例として紹介される多くのケースは、何かしらの「ファクトベース(事実に基づく)」で立案されているという特徴がある。例えばPR部門をふくむ複数でファイナリストとなっている「DRIVING DOGS(MINI/SPCA)」は、「世界で初めて犬がクルマを運転する」というファクトづくり自体がキャンペーンとなっている。

ねらいは捨て犬の引き取り率向上(のために、「SPCAのワンちゃんは賢い」という認識を与える)と、それをサポートするMINIの認知向上。従来の広告クリエイティブ枠の発想だと「MINIを運転するワンちゃん」のCMに陥りそうなところ(そして失笑を買うだけで結果は出ない)を、一流のドッグトレーナーの協力を得て本当に犬の運転実現に挑戦した。

そしてこれがファクト(事実)だからこそ、マスコミ報道とソーシャルメディアの反応も凄いことになり、結果として目的を達成した。

また、電通のセッションで紹介された各イノベーション事例も、「IBMの世界最小の映画」(原子工学)、「necomimi」(脳波)、「Sound of Honda」(走行データ)という具合に、「おお、スゴイ」と思わせ共感させるポイントは、それらが決して「フィクションではなくファクト」に基づくという点だろう。

そしてもうひとつが「パーパス(目的)」だ。

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