1972年に発売したロングセラーブランド「ピップエレキバン」のイメージが強い当社ですが、2013年のカテゴリー構成比は「コリケア」約4割に対し、「レッグケア」が約5割と近年はその割合が大幅に拡大、直近3年間の売上成長112%を達成するための大きな役割を果たしています。
当社の着圧ソックス「スリムウォーク」は1999年に発売。翌年からの積極的なマス広告の展開も奏功し、市場を開拓するとともにシェアナンバー1ブランドへと成長していきました。2005年の薬事法改正によりカテゴリー全体の広告投下量が減ったことから市場全体が下降トレンドにあったものの、非医療機器としてマス広告を継続的に打ち出し続けたことで、2007年まではトップシェアを維持してきました。
戦略の大転換で危機を乗り越える
しかし2008年、競合が着圧ソックスの「夜用」カテゴリーを開拓し、当時の“寝活”ブームとあいまって大ヒットしたことにより、事態は一変。スリムウォークは大きくシェアを落とし、その後4年間にわたって業界第2位の座に甘んじることになります。もともとの強みであった昼用カテゴリーを強化する一方、夜用商品には参入しないという当時の判断が裏目に出たのです。
このままではいけないと、戦略の転換を敢行したのが2010年。ここから2段階のフェーズを経て、スリムウォークはシェアを取り戻し、独自の新しい価値を提供できる商品ブランドへと生まれ変わりを図ったのです。
フェーズ1では、競合に後れをとること約2年、まず夜用カテゴリーに参入しました。競合商品の使用者調査を通じてインサイトを探り、差別化された商品の開発に着手しました。レッグケア機能は維持しながらも、履き心地の良さと可愛らしさを兼ね備えた商品を発売。続いて、その差別化ポイントをさらに強化した商品「ふわモコ美脚」を発売しました。
商品開発体制、生産・供給体制を刷新して品揃えを強化するとともに、一目で夜用とわかるパッケージデザインを採用したり、マス広告でその特徴を伝えることで、独自のポジショニングを確立しました。
新価値の提供で競合を引き離す
そして2012年、第2フェーズに入ります。ここで重視したのは新しい価値の創造。消費者観察や、雑誌編集者・医者といった有識者へのインタビューを通して、ヒールの高い靴を日常的に履く若年層女性の足・脚に関する悩みを徹底的に調査し、彼女たちの志向・ライフスタイルに合わせてその悩みを解決する商品「足指セラピー」を開発しました。
「足指が広がる気持ち良さ」をストレートに表現したテレビCMと併せて、多くの女性が「靴を脱ぎたい」と思うシーンである電車内でも広告を展開。機能価値よりも心理価値に重きを置いたコミュニケーションにより、共感から購入意向へと効果的につなげることができました。
大幅な戦略転換の舵を切った2010年から、2013年までの累計売上成長は4倍弱、利益成長は約7倍。金額ベースでも個数ベースでも、シェアを大幅に回復することができました。思い切ったマーケティング戦略の転換と、ターゲットの共感を重視したコミュニケーション戦略が、大きな成果につながったと実感しています。
(次回予告)
次回は、リンナイです。