そんななか、大学では、子どもの頃から環境教育に親しんでいる若者たちのほうが教授陣よりも環境意識が高いという逆転現象も起きていると言われています。
『環境会議』2013秋号「エコ大学」特集では、環境分野の研究と、環境マネジメントを積極的に推進する全国の大学の取組みを聞くとともに、学生環境リーダーたちに大学の環境活動への問題意識と自らの活動への展望を聞きました。そのなかで、「大学の社会的責任(USR)」が問い直されている実態が浮かび上がってきました。
これから4回にわたって本誌の一部を紹介していきます。
上地 成就 NPO法人エコ・リーグ・CCC実行委員会
キャンパスは若者にとって最も身近な「社会」であり、社会の中で率先して社会課題に取組むための「実験室」であると捉え、始められたのが、これから紹介するCampus Climate Challenge(CCC)の取組みである。今回は特に独自の大学環境評価制度「エコ大学ランキング」を中心に紹介する。
学生から始まったグローバルキャンペーン
CCCは、2005年にアメリカの学生が始めた気候変動問題に取組むための全国的なキャンペーンである。京都議定書を離脱した米国において、大学や社会を変えることによって学生から気候変動を止めようという思いから始まった。このキャンペーンは現在、北米で700以上の大学・キャンパスが参加するまでに発展し、さらにヨーロッパやアジア各国にも広がっている。キャンパスにおける徹底した省エネ対策や、再生可能エネルギーの導入や利用などによってカーボンフリー大学を生み出すなど、多くの成功を収めている。
学生自ら、気候変動という将来世代が大きなリスクを負う問題に立ち向かい、最も身近な空間であるキャンパスから変えていこうとするその姿は、欧米の学生の強い市民意識を象徴している。日本では、学生が中心となって運営する環境NGOエコ・リーグのメンバーなどが、2008年10月にCampus Climate Challenge(CCC)実行委員会を結成した。ちょうど、ごみ問題など身近な課題だけでなく、気候変動などグローバルな課題にもしっかり取り組みたいと考えていた時期に海外の学生たちの取り組みを知り、海外のキャンペーンにヒントを得ながら、日本の事情に合わせた活動を展開していくこととなった。
日本での取組み
CCC実行委員会の現在の主な取組みは、2009年から毎年実施している大学における環境対策の取組み状況の全国調査とその結果を基に評価する「エコ大学ランキング」の公表、調査結果を分析した内容や先進事例をまとめた『全国エコ大学白書』の出版、そして各種イベントの開催である。
「エコ大学ランキング」は、大学内における環境・省エネ対策のインセンティブ創出、および先進的に取組む大学の抽出と社会への発信を目的とした独自の評価制度である。毎年夏に全国の大学約750を対象に調査票を送付し、回答した大学のうちランキングに参加を希望した大学を対象に得点づけし、順位を発表する。
初年度は107校だった回答校は毎年増加し、これまでに総数293(のべ数573)の大学・キャンパス(一部の大学はキャンパス別に回答)が回答している。調査では、各種エネルギー消費量や再生可能エネルギーの利用量、温室効果ガス削減目標値、各種省エネ対策の実施状況、環境マネジメント実施状況、環境教育、学生との連携・協働状況などに関する200以上の項目を設定し、質問している。16頁に及ぶ調査にも関わらず、例年25%程度の回答率が得られていることについて、ご協力いただいた多くの方々に感謝申し上げたい。